平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

旅のアルバム + わたしの名刺は活版印刷  2009/10/19

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◆どちらかといえば定住を好むわたしが(たぶんモノが多いから)、無性に旅に出たくなることがある。
ひとつは、小説や絵本の中に出てくるシーンがとてもリアルに感じられたとき。今までも何度となく絵本を眺めていて、居ても立っていられなくって、旅に出たことがあった。
それから、もう一つは、素敵な写真に出会ったときである。
いつも大変お世話になっている某放送局のRKさんが、先日ポルトガルを旅された。RKさんはその様子をみごとな写真に納めて特性のミニアルバムにされ、わたしにも送ってくださった。そうして、わたしはすっかりその風景のとりこになってしまったというわけだ。
沖縄にも、宮崎にも、大分にも、奈良にも、金沢にも行きたい。ドイツには20年越しで呼ばれているし、中国も韓国もおいでおいでと手招きしている。そうしてこの度、そのリストにポルトガルが加わった。
わたしは旅を語る人が好きである。なぜだか理由はうまく説明できないが、想い出を手繰り寄せるようにして語る人が、その旅先までを含めてとても愛おしくなるからだ。人は旅先に心を置いて帰ってくる。
一冊の写真集、その気にさせた「責任」は大きい(笑)

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◆わたしの名刺は少し変わっている。デザインの話ではない。デザインは至ってシンプルで、名前とアドレス、URLしか記していない。電話番号の表記もなければ、住所の記載もない(そういう意味では変わっている。だがここで云いたいのはそういうことではない)。
今までおおくの方々と名刺交換をしてきたが、「そのこと」は、ただの一度も相手から先に指摘されたことがない。敢えてこちらからは説明をしないことにしている。
実を言うとわたしの名刺は、今ではレッドデータ職業となってしまった活版印刷所に仕上げてもらっているのだ。活版印刷は、今の印刷がインクをそっと紙の上に乗せるのとは対照的に、紙に文字を刻印するように印刷する手法である。なぜわたしが、活版印刷を選ぶかと言えば、そこには活字に対する敬意と愛があるからである。
実は話はここからで、先達てそのことをこの脳内探訪に書いたら、カメラマンの原田さやかさんが記事を読んでくれて、写真展の作品キャプションをこの印刷所のおじさんにお願いすることになったというのだ。
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/650.html
先日この印刷所に立ち寄ると、職人であるおじさんが奧から出てきて、原田さんから依頼された仕事がいかに大変だったかということを切々と語って聞かせてくれた。だが、おじさんの顔はとても誇らしげであった。瞳に炎がメラメラと燃えさかっていた。放っておけば、活版印刷という非効率的な職業はなくなってしまう。印刷所のおじさんもその腕をふるう場所が最近ではすっかり減ってきてしまったのだろう。その職人に原田さんは火を付けた。職人の意地が、過酷で過剰な注文をみごとにやり遂げたのだ。え、大袈裟ですって? 大袈裟かどうかは、会場で原田さんを捕まえて聴いてみると言い(笑) 運がよければ印刷所のおじさんも会場にいるはずだ。
 原田さやかさんの写真は静岡アートギャラリーで観ることができる。
http://www.h3.dion.ne.jp/~artspace/library-shizuoka02.html

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◆KKさんから頂いたお餅とドライフルーツを頬張っていたら、昨日、大学の研究室を退出する際、デスクに取り付けてあるミニ扇風機のスイッチを切ったかどうかまったっく記憶がないということに気づいてしまった。仕方がないのできょうの夕方、いそいそと大学へ出掛けていく。もちろん問題なく止めてあったので一安心。ふーっ。大変な時間のロスである。このテの物忘れの場合、かつて一度も止め忘れ、切り忘れ、閉め忘れということはなかったが、もしかしたら今度こそ!と思うと確かめずにはいられなくなって、わざわざ確認に出掛けた次第である。あぁ、情けない。しかし、こんなことをしている時間はない。速攻で戻り、再び原稿のチェックと資料づくり。土曜日から、経済の院生の授業も始まる。金曜日の授業の資料づくりもまだ30%である。水曜日には二時間弱あるひとつながりの話をしなくてはならない。右手の腱鞘炎が悪化。
ファイト!!!


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