平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

あのひとの活躍 鎌倉編 〜季節を枕に 松永みよこの言葉の切り出し方  2007/07/13

松永句集

     〜りりりるり鈴虫まねてけんか終ゆ


 旧知の松永みよこさんから、とてもかわいらしい小包が届いた。背筋がぴしっと伸びた知性的な女性だったことを思い出しながら、封を切る。中から出てきたのが、やっぱり背筋をピンと伸ばしたみよこさんのような本。佇まいが良い。それは抱えている空気感だ。
 そのみよこさんが、実に巧みな季寄せをして差し出したてくれたのが、幻冬舎ルネッサンスから生まれ落ちた句集『抱く』。驚くべきことに、まだ若い彼女だが、「ひびき」ということを天性のカンで持ち合わせている。そう、わたしが亀鑑している世阿弥の拾い上げる言葉の感覚に共通するものだ。


  〜雪うさぎ今消えゆきし身を抱き


 命の尊さを詠いながら、消えゆきで、雪がかぶって本書のタイトル「抱く」にすーっとつながっていく。雪うさぎの雪ということばによって腕の中で変わっていく温度の微妙な変化も伝わってくる。
 わたしは俳句の「生け捕る」感覚が大好きだ。ただし、悲しいかな詠むセンスはまったくない。以前某所で吟行に参加し、痛い目に遭いました・苦笑

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