平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

土曜日サロンmu chaへ絵本を3冊抱えて参加 2009/07/21

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◆先週末は、絵本を30冊ぐらい再読。
土曜日サロンmu chaの「わたしの好きな本」に何を持ち込もうかさんざん悩む。本当はテーマが夏野菜だったので、それをキーワードに選ぼうとしたが、該当無し。こじつけになってもイヤだ。
4冊まで絞り込みながら、最後の段階でふるい落としたのが47歳で没した夢野久作の『ルルとミミ』という童話作品だ。
『ドグラ・マグラ』で有名な(というか、ほとんど他は知られていないのでは?)夢野久作は1920-26年の7年間で、童話を約90編も書いている。その最後の作品がこの『ルルとミミ』である。悲しく透き通った心象風景は、その意外な結末に音読していると自然と涙がこぼれてくる。念のために検索してみたら青空文庫に全文がアップされていた。http://mirror.aozora.gr.jp/cards/000096/files/925_21796.html
やっぱりmu chaに持っていけばよかったかな。でも、会場で音読することを前提に選書していたので、声をあげているうちに涙が止まらなくなったらどうしょうと考えていたら勝手に手が本棚に戻していた。

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けっきょく持参したのは 『ちいさいおうち』(バートン著 石井桃子訳 岩波書店)、不条理さが大好きな『トルストイ 3びきのくま』(バスネツォフ著 福音館書店)、元片眼の飼い猫と思い出が重なる『タンゲくん』(片山健 福音館書店)の3冊。
なかでも『タンゲくん』は、大好きな絵本の一冊。まず画面からはみ出しそうなダイナミックな絵がいい。そうして何よりも、片眼というハンディーをもっていて、お世辞にもかわいくなくて、勝手に「わたし」の家に居着いてしまって、外で会っても無視するし、気まぐれで帰ってこない、最も猫らしい猫として描かれているところがいい。漱石の猫とは逆で、一言も自分のこころの内なんか語りはしない(もちろんビールも飲みません)。「我が輩」の方は、家の中を自由に移動する「目」であり、人の話をこっそりと盗み聞きする「耳」だけれど、タンゲくんは登場人物の女の子「わたし」の「他者」としての存在が際だっている。絶品。
そういえば二年前にこんな文章を書いていた。
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/168.html
『かばくん』(岸田衿子 中谷千代子 福音館書店)や『おだんごぱん』(福音館書店)も大好きだけどね。
というわけでも、平野の音読に併走するかのように、土曜日サロンmu chaの夜はシンシンと更けていったのである。じゃんじゃん。
参加者の持ち寄ったタイトルは、そのうちmu chaのブログにリンクする。

※どれもこれもすばらしい内容である。作者と版元の努力、装丁家の力、本当に頭の下がる。

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◆ここ「脳内探訪」には、仕事のことは半分も書いていない。たぶん五分の一も記していない。というのもプロジェクトのほとんどは途中で公言できないものばかりだからだ。だからひとには余計に怪しく、不可解にうつるらしい(笑)「何してるんだ、あいつは」と。平野は昼間から安酒あおって呑気に昼でもしているんだろうと一部思われているフシもある?!  
事実、以前のことだが(前にも書いたけれど)、近所の某おばさんが、「ヒラノさんち息子はいい年齢して、外車を乗り回して昼間から遊び回っている」とそこここで言い回っていたことがあった(苦笑)  まぁ、いいか〜(笑) 必ずこーゆー人はいるものである。おばさん、ご心配かけます。しかし、よりによって、こんなに働いている人をつかまえて、ねー。

【追記】『3びきのくま』は、1837年にイギリスの詩人 ロバート・サウジーが世に発表した。以来、長い間、サウジーのオリジナルだと思われていたが、後に、カナダはトロント公共図書館で1831年に手書きでかかれた民話が見つかった。





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