平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

長谷川穂積、恐るべし。

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7月14日 ボクシングWBCバンタム級で9連続王座を守った長谷川穂積が(お疲れさま)、スポーツ新聞のインタビューに答えて、すご--------------く興味深いことを語っていた。

「相手が息を吸っているときに打ったパンチはよく当たる」

これはとんでもないコメントである。格闘技に興味のない人は何のことやらと思われるだろうが、まさにこれはあらゆる格闘技の枠を越えた秘伝中の秘伝なのである。
では、格闘技を志す者たちはこのことを知らないのかと言えば、そんなことはない。だれもが、そんなことは知っているさと答えるだろう。この「秘伝」はそれだけ広く知れ渡っている「事実」なのである。矛盾しているようだが、この事実はあまりにも当たり前すぎて、しかし、だれもこの境地に達することができな秘技中の秘技なのだ。この境地に辿り着きさえすれば、もはや怖いものは自分をおいて他には何もないのである。
格闘技において、そこそこ強い選手というのは、自分の腕力を持って相手をねじ伏せて勝利に導く。事実、「技は力の中にあり」という箴言もある。だが、当然のことながら相手がこちらよりも腕力が強ければ負けてしまう。
ところが、相手の呼吸さえ読めれば、力技だけに屈服することはないと長谷川のコメントは改めて教えているのである。なんといっても余分な力など一切いらず、相手が「息を吸っているところ」さえ読めれば、そこを狙ってパンチをポンと打てばいいのだから。
これを「合気」という。合気は今や合気道にしか使われていな言葉だが、これは天と、相手と、自分の呼吸という三点を串刺しにすることである(ちょと説明が難解)。ただ力任せに、がむしゃらに動くのではなく、まず相手と気を合わせることだ。
もっと言えば、これは格闘技だけに言えることではない。そもそも長谷川が言っていることは呼吸法のことだし、呼吸法とは本来生命を営む行為そのものである。
日常生活の中でも、こちら側からみた正論だけを振りかざし、無理矢理相手をねじ伏せようとしても相手は反発するだけである。こういうシーンを本当によく見かけるし、自分自身も失敗を繰り返す。まずは相手との呼吸を合わせながら、スッと相手が息を引いたところを見極めるのがよろしい。

長谷川穂積、恐るべし。






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おまけ【ガッツ石松さんの小話】

インタビュアー「ガッツさん、きょうの試合は苦戦しましたね〜」

ガッツ石松「は、はい まさか相手が殴って来るとは思いませんでした」


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