気になると変わってくるね
イベントの告知って難しい、よく耳にしますね。自分自身もそうおもいます。チラシを大量にまいて、ポスターも貼って、サイトにも載せて、大きな組織では関係者全員にメール配信して、それでも「関係者ですら知らない」ってことはよくあります。だから「知らない」ということは、情報の「量」だけに原因があるんじゃないんだな、どうやら。そもそも人は興味のないことに対しては「知らない」のです。そうきちんと考え直すべきです。
わたしは以前、あるデパートのオープン広告に「気になると変わってくるね」というキャッチフレーズをつくりました。この広告は別に賞をとったわけではないんですが、わたし自身がとても気に入っているコピーなんです。
ほら、一冊の雑誌をパラパラめくったときに、興味のある特集にだけ目が行って、ごく一部の人を除いて、だいたいが他の記事は拾い読みをして終わります。雑誌を閉じたとたん中身の半分以上は覚えていません(ウソだとおもうなら誰かで実験してみてください)。要は、今自分の手で持っている雑誌の中身ですら「知らない」んですよ。そもそも情報とはそういうものなのです。
わたしが、例えば花子さんという女性を好きになったとする。花子さんはテニスに大変興味のある人で、デートする度に「あのね、あのね、テニスがね、平野君、テニスがね〜」と聞かされる。すると途端に、街中にいても、新聞を読んでいても、ラジオを聴いていても、電車に乗っていても、出張中でフランスにいても(最近ないけど)、「テニス」という言葉にひじょーに敏感になって、その情報を「知っている」状態になります。注意したいのはこの順番です。まず、花子さんを好きになる(気になる)。それからそのテニスを好きな花子さんを通してテニスが好きになる、という順です。
自動車なんかにまったく興味がないという人が、ある日免許をとって自分の欲しい自動車を決めた途端、今まで毎日のように通っていた道路に「へ〜 こんなにわたしの欲しい自動車が走っていたの〜」とはじめて気づき、驚くの同じです。犬を飼うことになった途端、あるいはメタ概念的に言えば、犬が好きな女の子を好きになったとたん、一括りにただ「犬」と呼んでいた動物にもこんなにたくさんの種類があるんだ〜とはじめて実感を持って知るのです。
そう、知っているか知らないかの裏側には「好き」という構造が隠れているんですね。そう、誤解を恐れずに言い切ってしまえば、イベントの告知は「量」ではありません(もちろん、もちろんTV-CMや新聞広告の効果も十二分にわかっております)。しかし、最も大事なのは「好き」の仕掛を〈普段からつくっておく〉ことです。「好きなものを好きな人を好きになってもらう」「好きな人が好きなモノを好きになってもらう」(わかりにくい?笑)。広告がよくタレントを起用するのはそのためです。
「好き」は言い換えると「気になる」です。わたしが創ったコピー「気になると変わってくるね」の意味はまさにそういうことなのです。
そう、それからもう一つ大事なのが、世の中が自分のやることに「愛情を持って接してくれる」構造をつくっておくことです。それは応援団をつくることです。プロジェクトを進めるときに、直接参加はしないけれど、でも応援はするね。気に掛けておくよ。そう言ってくれる応援団は本当に心強いですよ。
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