平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

静大フェスタ そうしてアナウンサーのことなど

◆いつの間にか、コンビニのゴミ箱がコンビニ間で共有化されてしまった。
「どこで買ったものでも、お互い様だからうちのゴミ箱に捨てても文句は言いません(本当は言いたいけれど)」。客は最初、こそこそとゴミを捨てていた。だが最近は自動車用のゴミ箱を持って登場する輩さえいる。習慣というのは、こうやってできあがっていく。


◆いつの間にか、街中のチェーン店のカフェが「語学学校化」している。今まではビジネスの打合せがせいぜいだった。だが昨今カフェの「語学学校化」はまことに著しい。教室の家賃は珈琲ショートサイズ2杯分。約2時間のテーブルジャック。

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◆週末の二日間、静岡大学60周年記念「静大フェスタ」に参加した。
わたしが担当したシンポジウムのパネリストとしてがんばってくれた学生の二人 人文学部言語文化学科の川原さんと教育学研究科の新井さん、ブースで活躍してくれた学生のみなさん(大変忙しい中を今回も動いてくださった静岡観光コンベンション協会の佐野恵子さんにはいつも頭が下がる)、研究発表で壇に上がる数秒前まで原稿を変更し続けた情報意匠論のチームのみなさん(笑)、本当にありがとうございました。みんな、また打ち上げするぞ〜!!(なんて、あっけらかんとしていると叱られそう。いやいや、そうではない。そういう人は大切なことを見落としている。 この頁の後半必読→http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/378.html

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静大フェスタの中継でも大変お世話になったテレビ静岡(フジテレビ系列)のみなさんには、ここ二年間、特に多くのことを教わっている。
フェスタの会場から中継を担当してくださったアナウンサーの菰田玲子さん、それをスタジオで受けてくださった近藤英恵さん、この仏像好きの二人には、自らが事前にきちんと学んでおきながら、それでも相手に話しを譲るということを、ことあるごとに教わっている(それにしては成長しないけれど)。
わたしたちはついつい「自分の知っていること」をさも「自分だけが知っている」かのように話したくなる。マイクを持って放さないのは何もカラオケだけではない。わたしたちは常に同じ失態を繰り返している。しかし、ある話題に対して、自分も知っている、でも相手も知っているというときの彼女たちのその感知能力はものすごい。たぶん相手の表情や微妙に動いた唇を観察して「相手の方にマイクを向ける」という選択を敢えてする。わかりやすく言えば「聞く力」が人並み外れているということだ。勘違いしてはいけない。アナウンサーの本当の実力がわかるのは、話す力ではなく、聞く力の方だ。
もう一人は、木村英里さん。やっぱりわたしがレギュラーで出演させてもらっている番組でいつもお世話になっているアナウンサーである。
例えば、わたしたちは誰もが日常生活のなかで贈り物をやり取りする。ある贈り物をいただいたタイミングでお礼を伝えるということは普通にする。だが、時が少し経ってから、「あなたから頂いたものをこんなふうに使っています」ということを、改めてメッセージする人をわたしはそう多くは知らない。木村英里というひとは、そういうことがさりげなくできるのである。しかも彼女の「手書き感覚」にはいつも唸っている。こういうことはけっして教わってできることではない。ハウツーやスキルではなく、気持ちの問題だ。そんな彼女のことだから、きっと多くの人に愛されているに違いない(すみません、ドラマは全く見ませんが、ドラマの番宣は見ます(汗))。

そうしてこの三人に共通していることは、品良くゆったりと見えて、実はものすごく高速で物事を処理している点だ。
「ゆったりと高速」。矛盾して聞こえるかもしれない。そこで、こんな風景を思い浮かべて欲しい。揚子江や黄河の流れだ。膨大な水をたたえたそれらの流れは、全体として眺めれば実にゆったりと見える。だが一回でもその岸辺に立ったことのある人ならわかってもらえるとおもうが、場所によっては想像を超えて流れは速く、轟音を立てて膨大な水を運んでいる。まさにあの様なのである。番組本番前には、時折その怒濤の流れが垣間見え、飛沫が飛んでくる。うっかりしていると呑み込まれそうになる。
「ゆったりと高速」、このアンビバレントな感覚を持ち得ているのは果たして訓練の賜物か。それとも社風か。いや、違う。きっと育ちなんだとわたしはおもう。そういう大河を抱えた人こそ、アナウンサーになれるのだ。
彼女たちは、いつもスタジオにいて与えられた原稿を読んでいるだけではない。その半分以上は、現場の人だ。だから情報に強い。沖縄にいたかとおもえば、田舎の田んぼで牛を追いかけ(?)、奈良や善光寺に突然出没し、十数メートルの高さから海面に向かってジャンプしたり(絶対にできません・汗)、シェットランドシープドックと戯れていたかと思えば吊り橋に揺られて愛を語ったり、韓国から画面に向かって手を振ったりもする(きっと)。まさに神出鬼没である。
門前の小僧、まだまだこれから盗み、学ばせて頂きます。押忍。



アナウンサーを目指す学生諸君。誰をお手本にするかで、明暗がわかれるとおもいます。特にアナウンサーの世界は。

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