ただ、課題の山が高く、谷が深いだけのことである。
過日、アッパレ会(正式名称:市民と静大・共同企画講座をすすめる会)という組織の総会があった。そこでわたしが担当する静岡大学の授業「情報意匠論」の活動報告の場があった。
情報意匠論では、いくつかのグループが各々の課題に取り組んでいて、テーマによってはサラサラと目に見えるカタチで結果を出すグループもあれば、道なき道を切り拓こうと必死でもがいているグループもある。わたしはそういうグループをとても愛おしくおもう。運命共同体なのだ。
そもそも今取り組んでいる課題は、昨年度後期授業のもので、とっくに単位も出ていれば、授業そのものも終了している。だが、もうや〜めた! いち抜けた〜! と言い出すメンバーが一人もいない。バイトや他の用事で参加できないメンバーにもきちんと議事内容を報告し、欠席者のアイデアをヒヤリングしてくる。何だろう、この強い学びの姿勢は。
当初、今回の報告の場では、既に結果を出しているグループの発表を考えていたが、わたし自身が「こんなに成功している企画です。こんなすごい成果が期待できます」という発表に少々疲れていた。で、学生たちと相談し、「企画って大変なんだ。わたしたちはこんなところにつまずいているんだ。でも必死で糸口をつかもうとしているんだ」という生々しい「報告」の場にしようと話し合った。美辞麗句を並べない。飾らない。演出しない。そのままを出そう。傷口をきちんと見てもらおう。そう話し合った。
結果、ご列席頂いた会員のみなさまは、わたしのたちの「報告」をどのように受け止めてくださったのかはわからない。だが、とても正直な報告ができたと思っている。「アッパレ会」は、そういう発表ができる場だとわたしは信じている。
ちなみに難産しているのは誰のせいでもない。ただ、課題の山が高く、谷が深いだけのことである。もちろん目の前の近道を駆け上がれば、すぐに目的の場所に到着できることだって知っている。だが、彼らはそのガードレールの付いた安全な道を敢えて歩かない。だってそうでしょう、企画は登山なんだから。まだ誰も歩いていない地図をつくる仕事なんだから。
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