平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

森を育てるにはたねから植える 〜アーティスト ファブリス・イベール

kurema


農業か それともアートか


   愚問である



以前から注目しているアーティストにファブリス・イベールがいる。

イベールは云う。
「僕は森を育てるように、アイデアを育てていく」
「芸術作品は農業あるいは植物に似通ったところがあります。毎日世話をして育てていかなければいけない、作品も同じで、それに手を加えてさらなる意味を加えていかなければいけない、そのようにわたしは考えます。
果実をもぎとる瞬間は、恋愛にも似た大きな喜びをもたらせてくれるのです」

イベールは、植物は苗からではなく種から育てた方が環境に早くなじみ、成長が力強いことも知っている。

なるほど、これは何も植物や芸術の世界だけの話しではない。
例えば、大手の資本が地方へ入ってくる場合にも全く同じことが言えるのではないか。どの企業も出来合いの苗という手法を持ち込み、その地にいきなり植え付ける。土壌調査はマーケティングという舶来手法を駆使するらしい。
しかし大事なのは、まず畑をしっかりと耕し、土壌が整ったのを確認してからはじめて種を蒔き、地域の人の力を借りながらじっくりと苗の大きさまで育てていく。そうして長い時間をかけてゆっくり、ゆっくり森にしていくことではないか。その瞬間はけっして焦ってはならない、というのが果実をもぐ鉄則である。

昨年のワタリウム美術館に引き続き、今年もまたファブリス・イベールの「たね」に会える。なんてラッキーなんだろう。
http://www.vangi-museum.jp/


バックナンバーはここ↓から。「表示件数」を「100件」に選択すると見やすくなります。

現在地:トップページ脳内探訪(ダイアリー)

サイトマップ