吉田秀和のさえずり 2009/05/09
忙しくて押しつぶされそうになると、わたしは決まって吉田秀和の文章に自分自身を通過させる。
山ではなくとも、鶯は私の家の小さな庭にもよく来て歌を競いあう。プリマ・ドンナさながら美しく澄んだ高音を響かせたり、力強いトリラーをくりかえしきかせたり、鋭いスタッカートで機関銃みたいに音を刻んだり、芸はいろいろだ(『永遠の故郷 薄明』(集英社)「雨に歌う」より)
そう、わたしにとって、吉田秀和は一羽の鶯なのだ。
彼は鶯がさえずるように文章を綴る。
そうして批評と同時にこれからのひとのために文化の土壌を耕している。
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