平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

北島町立図書館・創世ホールの小西昌幸さんという人

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徳島の小西昌幸さんとは、ネットで知り合った。彼は、徳島県の北島町立図書館・創世ホール館長で、海野十三の会の理事をされ、先鋭疾風社という版元の代表で『ハードスタッフ』編集発行人であり、日本推理作家協会会員である。

もう何年も前になるが、小西さんのあるサイトへの書き込みを見て、わたしからアプローチをしたのである。アプローチといってもたいしたことではない。手持ちの本を一冊プレゼントしただけだ。それは『全宇宙誌』(工作舎 杉浦康平 松岡正剛)、「空前の星書」という謳い文句の書物である。いまでも再販されることのない定価5000円の書物には、ヤフオク等で3万円も5万円もの値がつくことがある。

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上が旧版、下が新版。ともに絶版で、現在入手困難。定価5000円の本が、現在amazonで37800円で並んでいる。興味のある方はぜひ。

わたしはこの本をほとんど勝手に小西さんに送りつけるようにして届けた。まだ思い出すけれど、この本をどうしても手に入れたいと書き込みをしていた彼に、「わたし、複数冊持っていますのでお譲りします」というメールを送った。小西さんはきっと「何者だ、こやつ! 押し売りに違いない」と思われたのだろう(無理もない・笑)、やがて訝しげに、半身に構えたような雰囲気を漂わせて「いったいいくらでいいんですか?」という返事が届いた。わたしはただ「差し上げます」とだけ申し述べて、お勤め先にお送りした(何と言っても『せどり男爵』ですから・笑) http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0536.html)。
そんなわけで、爾来、小西さんとは、小さなお付き合いが始まったのだ。

前置きが長くなった。
その小西さんの何がすごいのか(すごいんです!)。それは、どの地方自治体も、「予算がない。よってすばらしいアイデアがあってもやりたいことができない」と嘆いているなか、彼ほど、「純粋な文化活動」にきちっと予算をつけてがんばっている役人を他にあまり知らない。どのくらいがんばっているかは定期的に送ってくださるニュースレター『創世ホール通信』を拝見していればよくわかる。それらはけっして莫大な予算をつけてことを動かしているわけではなさそうで、むしろ小西さんの人脈と熱い想いがおおくの人を動かしているように見える(間違いない)。わたしはこういう人を心底かっこいいとおもう。真似たいとおもう。

そうしてこのほど、小西さんから、彼が編集発行されている『先端的硬派雑誌HARD STUFF』最新の第12号と『創世ホール通信』の何通かが届いた。
それらを拝見して改めて驚いた。『南方熊楠の世界』を企画し、あがた森魚氏を招集し、小林多喜二を通して時代を見据え、大判昌司氏のご母堂・四至本アイさんとSF特撮研究家・池田憲章氏を絡めて鼎談を実施し、朗文堂代表の片塩二朗氏らを招いて印刷の研究に分け入り、伊福部昭という作曲家を真ん中において松田哲夫氏や木部与巴仁氏と存分に語り合い、漫画家長谷邦夫氏の熱気に耳を傾け、舞踏家・土方巽氏にスポットを当て、関西のパンクシーンをつくった男・林直人氏の追悼文をやや感傷的に(?)まとめて上げていたかと思えば、それを吹き飛ばすかのように数え切れないぐらいのライブを企画し・・・・まさに不況なんかどこ吹く風、小西パワーの炸裂である。

実はリアルな小西さんにはまだ一度もお会いしたことがない。一度チャンスをつくってお会いしたいと以前からずっと思っている。




◆コンドルズの『RED』を観る。何がすごいって、メンバー勝山康晴が高校時代に籍をおいた柔道部の顧問が応援に駆けつけ、パフォーマンスとして勝山を一本背負いで投げたことだ。その基本通りの投げにいちばん感心したのだ。そっと投げたその軌道の美しいことといったらない。やっぱり、何事も基本である。
    そ、そこですか・・・・   はい、そこです!!


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