平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

公立図書館における指定管理者制度

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以下、産経新聞の記事に寄れば全国に3027館ある市町村立図書館で、19年度までに指定管理者制度を導入したのは129館。導入しないとする自治体は400市町村(を超えた)。ということは制度導入が発令されてから5年も経つというのに少なくとも2898 館は保留か検討中ということだ。行政主体で進めている施策で、これだけ各市町村が導入に慎重になっている施策をわたしは他によく知らない。果たして「公立図書館」は、「効率図書館」でいいのだろうか。


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(以下2009年1月7日産経新聞朝刊より)
公立図書館の「指定管理者」制度5年 成功例も専門職員育成などに難点

 公共施設の運営を民間に任せる「指定管理者制度」。地方自治体の財政が厳しさを増す中、コスト削減と住民へのサービス向上を両立させるための仕組みで、創設から5年が経過した。公立図書館にも導入され、利便性が上がった図書館がある一方、多くの問題点も抱える。平成20年6月に図書館法が一部改正され、導入への配慮を求める付帯決議が採択されるなど、図書館をめぐる議論が本格化している。(文化部 猪谷千香)

 導入の成功例として脚光を浴びているのは、東京・九段下の千代田区立千代田図書館。19年5月のリニューアルと同時に、指定管理者に切り替えた。平日午後10時までの開館や、ビジネス関係のサービス充実などを実施。昼間人口80万人、夜間人口4万5000人といわれる千代田区で、利用者数は1年間で100万人を突破した。

 ただ、制度の導入に慎重な自治体も少なくない。日本図書館協会が20年6月にまとめた報告によると、全国に3027館ある市町村立図書館で、19年度までに導入したのは129館。導入しないとする自治体は400市町村を超えた。

 背景には、他の公共施設とは異なる図書館独自の特性がある。「図書館は、営利で成立する業務ではない」と指摘する協会の松岡要事務局長。協会では、図書館サービスには無料の原則があり、収益を生む事業ではないことから、「制度的な矛盾がある」としてきた。長期計画に基づき、将来必要とされる本を収集するなど、図書館員には専門的な知識や経験が不可欠だ。3年や5年で契約が変わる指定管理者による運営は、人材育成への弊害が大きいという。

 制度創設から5年を経た20年6月には、図書館法が一部改正された。同時に審議を行っていた参院文教科学委員会では付帯決議を提案、採択されている。付帯決議では、図書館など社会教育施設の人材確保について検討するとともに、「制度の導入による弊害についても十分、配慮して、適切な管理運営体制の構築を目指すこと」を求めている。

 横浜市議会では20年12月、市立山内図書館への導入が提案されたが、検討が必要として継続審議となった。松岡事務局長は「横浜市は政令市で図書館の規模も大きく、全国有数の優れたサービスを行っている。導入されれば、影響は大きい」という。協会では、導入の問題点を指摘する文書を市長と市議会に提出し、協会のサイトでも公表。「図書館には不向きな制度である」とあらためて呼びかけた。

 公立図書館数は年々、増加しているものの、図書館運営の要である資料費は減少している。9年には1館当たり1496万円だったが、19年は1020万円に落ち込んだ。公立図書館をめぐる状況は厳しく、長期的な視野に立った運営が求められている。


(写真:産経新聞)指定管理者制度導入の成功例として注目を集める千代田区立千代田図書館。平日は午後10時まで開館している


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