押し付けるようにする
原稿三本一気書き。新年早々、なかなか好調な滑り出しである。そんな中、クロースアップマジックの第一人者 前田知洋の『知的な距離感』(かんき出版)を読む。わたしが今もっとも敬愛するイリュージョネストだ。
そのなかで前田はChavez Studio of Magicというマジック学校(米国)の教えの肝を挙げている。
「マジシャンと観客の間には、窓ガラスのような見えないガラスがあって、トランプを示すにしても、出現したレモンを示すにしても、一度そのガラスに押し付けるようにすること。そうすれば観客は、次々と起こるマジックの現象においていかれることなく、常に何が起きたかをハッキリ理解する。マジシャンの演技はそうあるべきだ」
この「押し付けるようにする」がポイントだ。小手先だけで何かをやろうとすると、かえって肝心の「現象」が見えにくくなり、不信感だけが舞台に残る。安全や無難だけを考えていると、この「押し付けるようにする」という行為をついつい忘れてしまうものだ。これは何もマジシャンだけにいえることではない。わたしにとってはとても重要な箴言である。
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