平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

ハムレット宮城 VS ドン・キホーテ平野


◆例年であれば、ひとつのイベントなり公演や対談があると、そのあとしばらくレギュラーの仕事に集中する間があった。ところが今年は異常事態で、全くその時間が取れない。案件が自分の中で多重債務型にふくらんでいく。その都度、膨大に資料を読み込み、構成を錬っていくのだが、それが三つとか四つ同時進行する。部屋に案件の数だけ資料の大きな山ができる。そうしてそれが順次本番当日を迎えることとなる。山は減らない。次から次へと新しい山ができるからだ。
いざ、本番を迎えると、自分のふがいのなさを実感し、もっとこうすれば良かった、こう話せば良かったと反省ばかりである。いつものことではあるが、準備していった十分の一も話せない。
しかし、そういう「チャンス」を仕事を通して持てることはなんと幸せなことだろう。自分の不足を実感することこそ、成長への機会なのだ。




◆昨日11月16日は静岡県舞台芸術センターSPACの芸術総監督・宮城聡さんと、宮城さん演出「ハムレット」のアフタートークで壇上に登る機会を頂いた。まさにハムレット宮城とドン・キホーテ平野とのセッションである。

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宮城さんにお渡ししたお花は、「OHANA」のさつきさんがアレンジしてくださった。さつきさんのお花には型破りがある。まさにそれがアレンジということなのだ。
http://ohanaasute.exblog.jp/8993522/

言葉と身体がそれぞれ引き受ける演技の分量という話、いかに一挙手一投足に自らの経験を盛り込みながら演じるか・多数の点を意識的に通過しながら演技をするかという話で盛り上がる。宮城さんの話に、壇上にいながら一人の観客となって聞き入ってしまうぐらい話がおもしろかった。あっという間にタイムアウト。足を運んでくださったみなさまにも、きっとご満足いただけただろう。
ひと言裏話を書いておけば、今回は一切の事前の打ち合わせはなし。まさにぶっつけ本番という演出だ。こういうときの話の運びというのは、相手のジャンルにこちらの経験を丁寧に重ねあわせながら、その微妙なズレのようなものをミクロとマクロの視点で検証していくという手法をとるとうまく行く。自分の主張のボリュームを上げすぎたり、自分の土俵に引きよせすぎたりすると必ずトークは迷走する。

あ〜 楽しかった。パンフレットもいっぱい売れたようですしね(笑)


なお、当日足を運んでくださった大勢のみなさま、今回のトークのためにおおくの貴重な資料を提供してくださったブックデザイナーのHOLONさんや仕立士の高部葉子さんにもこの場を借りてお礼申し上げます。

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そのあと、らせん劇場の都築はじめ(業界の大先輩でもある高岡さん)演出の「パール・ライフ」に笑う。
「お店にお邪魔シリーズ ACT1」。そういうわけで会場は、実際に演技と同時刻に営業しているレストラン伊太利亭。目の前で演じている役者の向こうで、店主の圷akutsuさんとお客さんとの実際のやり取りが見えるし、言葉が聞こえてくる。こちらは唾のかかる距離での観劇である。
観客のどなたかが「お店が狭くて、わたしの席からは一人の俳優は背中しか見えなかった」と都築はじめさんに詰め寄って?いたが、いやなに、それが店というリアルな空間で演じるということなのだ。だからこそ、観客は一生懸命のぞき込むし、たまたま俳優が振り返ったときの感激が大きいのである。
蒲公英さらださま、八街ピーさま、油山みけさま、都築はじめさま ありがとうございました。

●らせん劇場 http://www.plaza.across.or.jp/~rasen-tn/
●伊太利亭http://www.geocities.jp/italytei/


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