平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

葵区魅力づくり事業・葵の旬 いただきます!中藁科ツアー

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 色々なところで、みんなに自慢していることがある。それはわたしが住んでいる地域のことだ。そこは静岡市葵区藁科地区の入り口にあたる。特にすばらしいのは、市街地から山奥へと向かって安西橋という橋を渡っているときに目の前に広がる風景である。
 安西橋は安倍川に架かる橋のひとつで、安倍川餅で有名な安倍川橋(別名、弥勒橋)の一本上流に架かっている橋をいう。徳川家康の命によって建穂(たきょう)とい地域からこの橋を渡って静岡浅間神社まで稚児行列が行われたので稚児橋とも呼ばれた。この稚児舞が後に浅間神社の二十日会祭となる。
 その安西橋を渡りはじめると、正面には前述の建穂から連なる山々が広がり、左手には、藁科川と安倍川が合流する中州にこんもりとした舟山が見えてくる。一転右手に目を移せば、季節によっては南アルプスが雪の帽子をかぶって凛とした冬景色をつくる。また、そのまま右後方に目をやれば、ニッポンを代表する春夏秋冬の富士山も臨めるのである。更にすごいのは、これらの風景がすべてがすっぽりと夕焼けの赤に染まる黄昏時である。もしも広重がこの風景に出会っていたらどんな一枚に仕上げただろう。

 さて、二つ前の脳内探訪にも少しだけ記したが、10月26日(日) 南藁科を巡るバスツアーに案内役の一人として参加させて頂いた。静岡市まちづくり振興課が企画しているシリーズ「葵区魅力づくり事業」の一環として実施された「葵の旬 いただきます!中藁科ツアー」である。

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 これが、わたし平野も満足させるなかなかの内容だったのである。
 葵区役所を出発した一行は、まず葵区大原にある「わらびこ」という施設に移動。そこで参加者約70名は4グループにわかれた。ひとつは、高山の散策コース、そうして「お茶の手揉み体験」 「柿の渋抜き、ゼリー作り、柿酢づくり」 「こんにゃくづくり」である。参加してくださったみなさんの笑顔をこの場にアップできないのが本当に残念だ。
 今回このツアーが成功している背景には、村の人たちと市役所まちづくり振興課の方々の信頼関係があった。これは間違いなく今までこの事業を丁寧に丁寧に行ってきたまちづくり振興課の成果だろう。この信頼関係があって、当日は地元の方々が手作りの祭りで参加者をもてなしてくださった。
 そこでは村に古くから伝わる神楽が舞われ、採れたて野菜の市が立ち、先に挙げた4つの講座の先生役を務めてくださったというわけである。地元の人たちに伺ってみたら、こういった講座の先生をするのは、なんとはじめてだそうである。それは確かにつたないかもしれない。しかし、こういった想いそのものが「もてなし」「ふるまい」「しつらい」なのだ。

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 今まで「まちづくり」といえば、いかに施設を整えるか、どんなイベントを開催するか、そういったことに我々は気を奪われ過ぎてきた。地域の資源をきちんと見つめ直すことこそ本来の観光であるし、まちづくりの大切な在り方だろう。そういうことをわたしも身をもって体験した。
 またこういったツアーを「ご用意されたもの」という言葉で批評するひともいる。これはあくまでもひとりで歩き出すためのひとつの手段である。重要なのはそこを自覚的にやっているか、無自覚で進めているかの違いだ。当日案内役の平野に求められた仕事のひとつは、そこを参加者へきちんとアナウンスすることなのだ。
 なお、まちづくり振興課では、このあともさまざまな企画が目白押しである。百聞は一見にしかず。ぜひ一度参加してみたらいかがだろう。
http://www.city.shizuoka.jp/deps/suruga/mati/index.html


他にも書きたいことが山のようにある。明日は『2008ROUTE 日本海〜太平洋シンポジウム』、わたしはパネラーの一人である。
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/637.html


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