平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

一ミリずつ 一ミリずつ

meguro


 バロック建築としても有名な目黒雅叙園、そのカフェ・パンドラでAさんと打合せ。Aさんは作家であり、今やワーキングプアや生きづらいマイノリティーの救世主でもある。一見すると華奢なラインだが、生き様という背骨の太さが明らかに他の人とは違う。常に闘う「現場」を持った人だ。
 Aさんは子どものころ酷いイジメに遭い、リストカット、オーバードーズを繰り返してきた。しかし、その中から少しずつ、毎日一ミリずつ踵を地面から引き上げるようにして、さまざまな生き様と出会ってきた。そういう文脈の先に今のAさんがある。力強い。
 わたしの憧れの政治学者・姜尚中は、幼いころは吃音だったという。何がきっかけかは知らないが、彼はそこから抜け出して今では屈指の語り手となっている。
 神話の神々は、欠けているその部分の神になるという。片眼の神は未来を見つめ、数万メートルを見通す眼力を持ち、片足の神は俊足の神となる。この神話の構造が教えるように、そこには確かに微妙でいて大きな「境界」があるように思える。一ミリずつ、一ミリずつ。

sut20

とんぼ返り。今から明日の講義の準備。間に合うのかしらん。寝られるのかしらん。


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