平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

美しさをラインで表現した白いシャツ

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                             二重の襟


仕立士・高部葉子さんにお願いしていたシャツが上がってきた。高部さんの作品展「春時間」http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/434.htmlにおじゃました折り、一枚のレディースのシャツを見て一目惚れ、これを平野用にアレンジして欲しい、とお願いしてあったものだ。
 ところで、市販のメンズのシャツというのは、なぜあんなに男男しているのだろう。そりゃ、メンズだからでしょう〜という答えをわたしは期待していない。シャツだけではない。バッグ類も何かごつごつしていて、俺様は男でござる!質実剛健である。堅牢であ〜る。シャツもバッグも、そう主張している。最近の若者のシャツには、中性的なデザインも芽生えているようだが、我々おじさんのワードローブはもう93パーセント(微妙な数字)が「男(臭さ)のデザイン」「紳士の一流品」だ。
 華美な装飾など一切いらない。奇をてらう必要もない。ただただ美しく。その美しさをラインだけで表現したような、危ういウスバカゲロウのようなシャツとか、パラフィン紙のようなテキスタイルとか、雲母のような質感とか、そういうシャツが圧倒的に不足している。そこをいとも簡単にひょいと乗り越えているのが高部葉子のシャツなのだ。
 秋の入り口を、高部さんに仕立てて頂いた真っ白なシャツで過ごした。彼女のシャツはいつも風を孕んでる。

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