平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

おっさんミーティング 第5弾

hibi


 高齢の、いやいや、恒例のおっさんミーティングである。

「ただ漠然と会いましょうってやめませんか。メールですむような話を、さも大事なことのようにしつらえて」  「違うって。顔を合わせないと伝わらないことってあるでしょ」  「もちろんその通りです。メールが普及し始めて、その説が俄然追い風を受けた」  「やっぱり、直接会わなきゃ」  「その決めぜりふは不愉快です。会って話すかどうかは内容でしょう。仲良し子良しの井戸端会議じゃないんですからね。まあ、それはさせておき、これ、この間の宿題です。・・・・で、〈山を張る〉ってことを今回の企画のコンセプトにしたいです。いわゆる〈山勘〉。なぜ山なのか。〈海を張る〉〈海勘〉でもいいじゃないですか。でも日本ではそうしなかった。そこにこのプランの重要な秘密がある」  「ほう、興味深いね。でも平野君のプランはいつも難解だし(笑)」  「一見難解に思えるかもしれませんが、インターフェイスはやわらかくしますよ・・・かくかくしかじか・・・という到達イメージ」  「ほう、わかった、あとは任せた。進めて」  「そういう、思いっきりだけは良いんですね(笑)」  「納得したら、後は任せた方が良いものができる。素人がゴチャゴチャ云うとけっきょく失敗するからね。生兵法はケガのもと。インフォームドコンセントっていうのも同じ問題を抱えているよね」  「発言に毒がありますね(笑)」  「しかし、暑いね〜。死にそうだ。この間、脱水症状で本当に死にそうになったんだけどね」  「まだ今月分の支払いが済んでませんからね(笑)」  「そもそもなぜ人は死ぬんだろうね」  「根元的な問ですね。アポトーシスとネクローシスって聞いたことありますか」  「いや、まだ食ったことはないね〜 苦そうな名前だな〜」  「落語じゃ〜なんですから。両方とも細胞の死に関する考え方です。アポトーシスは自ら死んでいくことをあらかじめインプットされた細胞のプログラム。オタマジャクシのシッポはある時期に差し掛かると自然と切れてなくなりますでしょう。あれは細胞の中にあらかじめ自らが死に向かうプログラムがインプットされているんです。もちろんオタマジャクシだけでなく我々人間もアポトーシスによて支配されています。もともと我々の指は最初七本あるといわれています。親指と小指の外側にそれぞれ一本ずつの合計七本です。また指と指の間には水かきのようなモノがあるといわれていますが、それが受精後の短期間で一気に生命進化の過程を走り抜けることで自らの細胞(二本の指と水かき)を死なせる。そうして人間は人間になっていくのです。それがアポトーシスです。一方、ネクローシスは不慮の事故によって細胞が死ぬことです」  「例えば火傷とか交通事故とかがそうかな」  「そうです、その通りです」  「他にも死に関する考え方あるんですが、例えばアポビオーシスもその一つです。聞いたことはありますか。はいはい、食ったことはない、ですよね(笑)」  「のりつっこみ、やるじゃないか〜」  「はいはいはい、話を先に進めます。我々の細胞というのは日々死と再生を繰り返しています。ところが、脳の細胞はどうでしょう」  「毎日死んでいたら記憶が保てない。まあ、最近特にそーゆーことが多くなってきたけれど・汗」  「神経細胞や心筋細胞などの非再生系の細胞はそんなに簡単に死んでしまったら大変なことになってしまいます。生命維持すら難しくなります」 「置き換え不可能細胞だってことだな」  「そこでそれらの細胞は非常に長寿なんですよ。何度も死と再生を繰り返すことが彼らにとったら非効率的なんですよ」  「ちょと待って、それと人間の死はどう関係するわけ」  「ちょっと専門的になるんですが非常に噛み砕いて云えば、有性生殖の場合、古い遺伝子と新しい遺伝子がゴチャゴチャになると生命維持活動に混乱を来す。そこである一定期間で古い遺伝子から順に死んでもらわないと困るんです。生命を維持して行くには確実に古い遺伝子をキャンセルしないと不都合が生じます」  「そうか〜、一見矛盾して聞こえるけれど生命を維持していくために古い遺伝子は敢えて自ら死を選択する。それが我々が普段いっている死ということなんだ」  「そうです。理解がはやいじゃないですか。まだ脳細胞は生きていますね(笑)」  「いちいちうるさいよ〜」  「ガン細胞は永遠の命を持った細胞です。放っておけば増殖する一方です。お互いに社会や会社のガンにはなりたくないですね〜(笑)」  「生意気なこというガキだな〜。まだケツは青いんだろう〜、クチバシは黄色いし」  「腹は黒くありません(笑)」  「難しいことはいいから一杯やろうよ。はやく飲みに行こう。どうせ人は死ぬんだからサー」  「出た出た、出ましたね〜(笑)」  「人生、楽しくやらないとね」 


◎おっさんミーティング第1弾
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/431.html
◎おっさんミーティング第2弾
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/467.html
◎おっさんミーティング第3弾
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/480.html
◎おっさんミーティング第4弾
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/515.html


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