平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

「北極からの贈りもの Lisa VOGT’S White Gift」 2008/08/06

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 リサ・ヴォート写真展「北極からの贈りもの Lisa VOGT’S White Gift」を観る。会場は地下鉄東西線・東陽町の駅を下りてすぐのところにある竹中工務店・東京本店 GALLERY A 4(エークワッド)。そのGALLERYは多くの人々が行き交うビルの一階にある。玄関をくぐると今回の展覧会のシンボルである原寸大のホッキョクグマが出迎えてくれる。迫力満点である。展示空間は、静かだが、生き生きとしてる。風の流れがあるのだ。
 やっぱりGALLERYというのは、大勢の人に足を運んで頂いてナンボである。ひとりでもおおくの心ある人に観て頂き、その声によってGALLERYは成長していく。いくら立派なフライヤーをつくり、手前みそな企画を連打してもそれは金持ちの自己満足でしかない。わからん奴に観てもらってもしょうがないとお高くとまっているなら、最初から会員限定で公開すればいい。それはそれで一つのやり方だ。

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 リサの写真にはアウラがある。シロクマの体毛に雪や氷に反射した光りが当たり、一本一本の毛が輝いてみえる。眩しい。ただ、シロクマがかわいいだけではない。作品を前にすると背筋がピンとする。写真集『White Gift』でも「その刹那」に十分感動させて頂いたが、やはりプリントの力というのは絶対である。
 写真というのは、写真集で観てもプリントでも観ても大きさの違いだけで、あとはたいした差はない、そう思っている人は未だ良い写真に巡り会っていない人である。
 
 写真を通して異空間を感じさせてくれるのは、もちろん「写真の力」によるところが大きいが、もう一つはギャラリストやキュレーターの力が大きく影響する。キュレーターは、展示空間の構成力と同時に、それを「言語化する力」を持っていなければならない。そもそも言語化できないキュレーターはキュレーターではない。良いキュレーターは良い批評家でもある。キュレーターはライセンスがあるからキュレーターになれるのではない。良いものに寄りかかって「作品がすべてを語ってくれています」などとお茶を濁すキュレーターはキュレーター失格である。作品のことを訊いても、作者のプロフィールや裏話ばかりを話すスタッフには本当に嫌気がさす。そういった意味でも、今回の展覧会は写真家とキュレーターが四つに組めた成果なのだろう。お世辞抜きに気持ちが良い。
 会場に展示されたワークショップの作品を観ると、いかに参加者が楽しんでいたかがよく伝わってくる。ワークショップの成果というものは、いくら取り繕っても誤魔化せるものではないのだ。

 一通り展示を拝見してロビーに出ると、「あの〜・・・平野さん・・・」と声を掛けてくださる方がいた。何と某ネットの学校の同志O部さんではないか。なんでもこのGALLERY A4を企画展示する主任学芸員をされているという。運命的な出会いである。なるほどO部さん企画だということですべてが腑に落ちたのである。


 リサ・ヴォートさんの活躍は
http://www.lisavogt.com/
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/427.html


実は、上の写真でシロクマの着ぐるみに入っている方も昔からの知り合いです。夏の着ぐるみ地獄、ご苦労様です。もちろん着ぐるみの中だけで活躍したのではなく、全プロデュースもこの方です( ↓ )。
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/327.html

◆今回惜しくもこの展覧会を見逃してしまった方、次回は12月4日からからニューヨークで開催ということです。

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