そういえば思い出した!
大満足の一冊
このところ移動時間を利用して本もいっぱい読んでいるのに、そのことがこの場に何も書けていない。読んで、観て、書いて、話して、食べて、読んで、観て、書いて、話して、食べて、寝ない。とつおいつ、こうしているのが今の生活のパターンである。とにかく仕事ではバタバタしてはいるものの、充電と放電、その両者を並べてみたら完全に充電時期にある。
学生のころ、テスト前になると無性に映画が観たくなり、本を読みたくなった。それは、適度にストレスのある状況下に身を置くことにより、普段は稼働していない脳の部位にスイッチが入り、電流が流れはじめるからだ。今でも締め切り間際の追いこまれた状況になると、足下積んである本についつい手をのばしてしまい、そうして読みふけってしまう。もちろんそういうことに限って、優先順位は低いものばかりだが、奇貨居くべしと意気込んで、早急に片づけなければならいことがさっぱりと終わりを告げない。
だがこの寄り道こそひじょうに大切なことなのだ(と、自らに言い聞かせる)。この寄り道、脇見こそ、「そういえば思い出した!」という別の情報を手繰り寄せる行為を誘発していて、それが効率的に作動しはじめている状況だからである。わたしが人の対談が大好きなのは、お互いがお互いの発言に触れて、「そういえば思い出した!」ということで思いもよらない方向にハンドルが切られたり、用意していなかった事柄を取り出す瞬間を目撃できるからだ(良い対談本というのは、その「刹那」を切り落とさずに、きちんと掬い上げる編集をいう)。逆に言うと準備しすぎて、「そういえば思い出した!」に出会えない対談ほどつまらないものはない。
これを書いていて「そういえば思い出した!」がいくつもあった。だが残念なことにわたしの場合には記憶力に乏しいので、この短い文章を書きあげる短時間にそれらのことをすっかり忘れている。
※そういえば思い出したっ!