平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

里山 命めぐる水辺 〜滋賀 針江地区 2008/06/15

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滋賀県高島市新旭の針江地区は琵琶湖の北西部に位置する。その針江では湧き水を利用して、旧家の並ぶ村落内に水路を走らせ、それを家の中に引き込み「かばた(川端)」として利用している(「かばた」には、家の中に引き込まれた「内かばた」と野外に設置された「外かばた」とがある)。

その「かばた」には鯉が放たれ、もとは琵琶湖から遡上してきたヨシノボリが棲みついている(琵琶湖で捕った野鯉が放される場合もある。ちなみにボランティアガイドさんによれば、鯉はカレーが大好きなんだそうである。普通の白飯とは鯉の食いつきがまったく違うらしい。ただし「鯉のあらい」はカレーの味はしないそうだ・笑)。

そうして、村人はそこで日々の食事の支度をし、敢えて残飯を流して魚たちのエサにする。洗濯もこの場で行われたりもするが、市から購入する特別の洗剤以外は使用せず、自然の循環を壊さないように努めている。
それが決して「自然環境を守ろう!!」と拳を突き上げた運動ではなく、ずっと昔から生活の一部となっているところに価値がある。

もちろんこの地方にも「生活の便利さ」というカゲが忍び寄って来ている。だが、それを早くから察知して、動いているボランティアの人たちがいる。ごく一部の人たちにしか接したわけではないが、彼らからは押しつけがましい態度は一切伝わってこない。極自然なふるまいなのなかに彼らの生活があることが伝わって来るのだ。

少し前にこの「脳内探訪」に、静岡県三島市の水の美しさについても書いたことがあるが、針江の取り組みは三島の水との関わり方とはちょっと違っていて、もっと「生活感」にあふれている。三島にも「かばた」のあとが残っていたが、三島は一部を残しそれを手放してしまっているように見える。また、松江の堀川巡りや福岡の柳川の取り組みともまったく違っている。あくまでも針江のそれは「生活そのもの」なのである。

興味深かったのは、案内してくださった方のひとりの「ここに住んでいると当たり前の風景なんですけどね」という発言だ。それは自分の住んでいる地域をもう一度「外側の目になって観察してみる」ことの大切さを教えてくれている。

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すぐ上の写真は百年続く豆腐屋さんの「かばた」。他の「かばた」は個人のもの。

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村落内を流れる水路で水遊びをするこどもたち(っていうか、やってみたい!! わたしなら絶対に「かつてのこどもたちのための体験ツアー」を計画する)。こどもたちからは自然と「こんにちは〜」とことばが返ってくる。

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(↑)ショーアップではない現実の生活がここにはある

                   村の中を縦横に走る水路(↓)。

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(↑)案内をしてくださったひとり石津さんの田んぼは景観形成水田に指定さている。
(↓)そこで収穫された有機農法でつくったご飯を頂く。

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(↑)村の中でいちばん古いとされている「かばた」。苔の生えている部分は、二百年も前のものだそうだ。

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冷た過ぎず、ぬる過ぎもしない湧き水(↑)

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(↑)水が綺麗で、酒造許可もおりている松尾さん宅の「かばた」。

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     わたしを突き動かしたNHKの番組『里山~命をめぐる水辺』。




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学問の神様といえば、菅原道真ばかりが取り上げられるが、内村鑑三が『代表的日本人』で挙げた五人のうちのひとり中江藤樹はいかに学ぶかということを生涯にわたって実践してきた人物だ。「到良知」という言葉で藤樹を思い浮かべる方もいるだろう。藤樹は近江聖人として崇められ、明治になってから村人によってその社が建立された。




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そのあと京都に移動して格別なイタリアン(暖簾の色からもおわかりでしょう)をいただく。京都滞在は約三時間、もっとゆっくりしたかった。が、誠に充実した二日間であった。


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◆「名古屋シネマテーク」で熊坂出監督の『パートアンドラブホテル』を観る。これは28日に。
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/474.html


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※今日現在、twitter上でつぶやかれている平野雅彦さんは、私平野雅彦ではありません。


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