三度目の挨拶の話 〜 赤池キョウコ、K田氏、大谷峯子の仕事
郵便物が大量に届く。ポストに入りきらない。いったいどこで私の名前を調べてこれだけ大量の郵便物が届くのだろう。私ごとき人物でこの量なのだから、市長さんや社長さんたちなら、街角に設置された回収用サイズのポストが必要だろう(彼らと私の明らかな差は、それを事前処理してくれる秘書がいるかいないかだ・汗)。デザイン事務所、印刷会社には申し訳ないけれど、ほとんど見ないでゴミ箱行き(一部古紙回収ボックスへ)。内5通が目を通すべき私信。更に内三通が直筆葉書。二通は封書。
封書の一通目は、赤池キョウコさん(最近は「イラスト作家という肩書きなのね」)からの九冊目の新刊。
キョウコさんは編集のお仕事をされる傍ら自著を連打し、船井総研会長の船井幸雄さんと共著を上梓するなど、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの女性だ。中国語版にもなった『ハッピーな奇跡がやってくる!』(グラフ社)にはうさぎキャラの(滅茶苦茶かわいい→)平野も登場する(←本人そのものもかわいいけれど。え、なにか?)。
今回送っていただいた新刊は『マンガでわかる西式甲田療法』(マキノ出版)。一言でいえばキョウコさんの闘病記である。ストレスフルな生活を余儀なくされた彼女をある日襲ったのは難病の腫瘍性大腸炎。昔から髪は女の命というけれど悪性脱毛症を併発し、髪は一本残らず抜け落ちたという(正確には全身の毛が抜けたと書いてあった)。そんな最悪の状況から彼女はいかにして脱出したか?!
しかし、これだけ深刻な内容をかなり大胆に、そうしてリアルなストーリー展開で見せているにも係わらず、読む者に「お涙頂戴」「同情してね」にならないのは彼女の絵のタッチとタイトな筆運びのせいだろう。
まぁ、テレビのコメンテーターや講演とお忙しいとはおもいますが、ほどほどにね キョウコさん。
もう一通はK田さんから届いた、彼女が編集担当しているJR関係のPR誌。今回は取材先を私がご紹介したこともあって掲載誌を送ってくださったのだ。
あ〜 これを読んでいると旅に出たくなる。本誌に掲載のある下田にも久しぶりに行きたい(昔イベントや編集の仕事で月に何度も通った)。東北特集にある鳥海山に行きたい。しかしどれもこれも、そそられる写真である。文章も平易でよくまとめられている(きっと校正者が入っているんだろう)。
連鎖的に思い出したけれど神話のふるさと宮崎の高千穂峡に行きたい。奈良にも行きたい(西行の桜は終わってしまったけれど)。滋賀県の針江には近々絶対に行く(でもGWは静かにしている)。まずい、行きたい行きたい病が発症した。
つくづく思うけれど、たった一枚の写真が人々の足をその場所へと誘う。もちろん文章力やデザイン力も重要だが、時として一枚の写真の力はそれを越える。だから旅行会社さん、カメラマンにはきちんと予算をつけてくださいね(制作会社へ丸投げはいけません。写真の項目をチェックしてください)。
だが最近ではその多くが素人に毛の生えたような写真を採用するものだから、雑誌もかなり劣悪な環境にある。そのひどさといったら地球環境の比ではない(京都議定書に写真のことも入れ欲しいぐらいだ)。とくに目を背けたくなるのが料理写真。料理の写真は単方向からの明かりではまずおいしそうに撮れませんから。みなさん、手を抜いた取材かどうかは、料理の写真をチェックですよ。
さてきょうは、ひとつの前の「脳内探訪」で予告しておいた大谷峯子さんのご著書『テキヤ一家のおばあちゃんに学んだ10の教え』(マガジンハウス)の感想を記しておきたい。
大谷峯子さんは本業のコピーライターとして活躍されるほか、雑誌や新聞へエッセイや物語を寄稿する作家で、それだけでなく児童向けの話も創作する児童作家でもある。
今回の本は少々異色の内容で、大谷さんのご先祖様であるテキ屋親分の教えを、その娘である大谷さんのおばあちゃん(既に亡くなっている)との会話形式で紡ぎ出していこうという試みだ。
とにかく何カ所も共感した。なぜ私が、この場「脳内探訪」に何回も「挨拶ができない奴はダメだ」http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/272.htmlと書いてきたのか、その理由をこの本は明解に教えてくれる。
それは「挨拶は『仁義』だからである」。
そもそも仁義というのは孟子の「仁と義」からきている。「仁」は広く人やものごとを愛すること。「義」は道理を重んじる心とでも云えばいいか。
挨拶は、辞儀。つまり「お辞儀をする」の辞儀なんや。 (中略) 「辞儀」という言葉を、音の似た「仁義」という言葉に変えたのは、そこに、哲学のようなものまで込めようとしたからではないだろうか。
(おばあちゃんが憑依した)大谷さんはそう綴る。
なるど! これで胸のもやもやが一気に晴れた。要するに、私は仁義が切れない人間が、根っから嫌いなのである。仁義が切れない人間は既にその時点で「人の道」から外れている、そういうことなのだ。
ではなぜ仁義を「切る」のかといえば、切るには「せまる、近づく」の意味があり、それは仁と義をもって相手の心にぐぐぐぐぐ〜と切って開いて近づく儀礼だからである。
大谷さんの冴えた筆はこのあと更に勢いをますのであるが、その続きはぜひ本書を。
ここで10の教えをまとめておこう。
「ひとつ、ハッタリをかませ」
「ひとつ、魔力をみがけ」
「ひとつ、義理は命よりも大事」
「ひとつ、仁義を重んじろ」
「ひとつ、挨拶がすべて」
「ひとつ、旅に生きよ」
「ひとつ、子どもに跡目を継がずべからず」
「ひとつ、家業あることを誇りとせよ」
「ひとつ、自律心を持て」
「ひとつ、芸を売れ」
以上10の教えには人が人として生きるための「仁義の切り方」が詰まっている。
いつもテレビ出演でお世話になっているヘアメイクさんのメイクボックス。
ほんとうは参加したサロンの話とか、書きたいことは山のようにあるけれど、きょうはこのくらいで勘弁してやろう(笑)