平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

有度サロン

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SPAC(静岡芸術劇場)が主催している「有度サロン」に先週から通っている。
シリーズ第二回目は五十嵐武士コーディネート(東京大学・日米比較政治 丸山真男最後の教え子)で本日のゲストは国際政治が専門の藤原帰一(藤原は五十嵐の教え子)。
対話はパラレルに進み、ほんの一瞬袖を触れ合う議論になるが、すぐにまた並行して話が進む。二本のオムニバスを同時に聞いているような感じもするし、師と弟子の静かなる丁々発止の現場に立ちあっているのだ。
テーマがグローバリズムとナショナリズムだからどうしても話が散漫になりがちであるが、ゲストの藤原がそこをきちんと時間を掛けて整理しながら、今自分はどこをどの目線で話しているのかを明確にしながら議論を進めていく。
本筋ではなくて恐縮だが、対談中ずっと気になったのは、藤原は対話に参加しながらずっと小さな黒い手帳になにやらメモを取り続けていたことである。とにかく約2時間、自分が話していないときはぶっ通し綴っている。それは、対話の中で思いついた「別の事柄」をメモしているようにも見える。五十嵐の話をメモしているわけでもなく、そこから思いついた事柄をメモしている様子もなく、そこから思いついた「別の事柄」を細かく細かくスクラッチているように見えたのだ。申し訳ない言い方であるが、他の原稿でも書いているようにも見える。藤原の能力なら十分あり得る話だ。

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「有度サロン」の内容は以下の通り(静岡県舞台芸術センターのNARUSHIMAさん、色々ご案内ありがとうございます)。


<グローバリゼーション下>における課題とは何か!?

◆「歴史的転換と日本の選択」 コーディネター・五十嵐武士(東京大学教授・日米比較政治学)
 

● 4月6日(日)10:30 舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」

対談者:苅部直(東京大学教授・日本政治思想史)     

● 4月13日(日)10:30 舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」

対談者:藤原帰一(東京大学教授・国際政治)  
日本は今や、グローバル化の波に飲み込まれる不安にさいなまれている。この不安は相も変わらず、「宇内の大勢」に適応することばかりに腐心して、「大勢」をどう動かすかを構想する想像力の弱さを示している。今こそ「グローバル化する世界の中で日本がいかにあるべきか」という、基本的な課題に遡って想像力を巡らす時である。(五十嵐武士)
○五十嵐武士(いがらし・たけし) 主な著書に『日米関係と東アジア』(東京大学出版会)、『覇権国アメリカの再編』(東京大学出版会)など。
 
○苅部直(かるべ・ただし) 主な著書に『光の領国 和辻哲郎』(創文者)、『丸山眞男』(岩波新書)など。 
○藤原帰一(ふじわら・きいち)主な著書に『テロ後—世界はどう変わったか』(岩波新書)、『平和のリアリズム』(岩波書店)など。
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◆「日本のモデルニテ・再考——鹿鳴館から人間天皇まで」  コーディネター・坂部恵(東京大学名誉教授・哲学)
  

● 4月20日(日) 舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」 

対談者:黒崎政男(東京女子大学教授・哲学) 
 
● 4月27日(日) 舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」 

対談者:守中高明(詩人、早稲田大学教授・フランス文学・思想) 
  

〈有度サロン〉の企画は魅力的だ。「楕円堂」という、胎内でも太古の墓場でもあるような、何とも不思議な雰囲気の空間で、質疑や、対談をする。この圧力に拮抗して、日本の近代というおどろおどろしいドラマを、多少ともこの場に喚び寄せてみたい。(坂部恵)
○坂部恵(さかべ・めぐみ)主な著書に『仮面の解釈学』(東京大学出版会)、『モデルニテ・バロック——現代精神史序説』(哲学書房)、『坂部惠集』(全5巻、岩波書店)など。

○黒崎政男(くろさき・まさお)主な著書に『身体にきく哲学』(NTT出版)、『カント「純粋理性批判」入門』(講談社)、『となりのアンドロイド』(NHK出版)
 
○守中高明(もりなか・たかあき)主な著書に『存在と灰——ツェラン、そしてデリダ以後』(人文書院)、『法』(岩波書店)、『守中高明詩集』(思潮社)など。
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◆「歴史の反復について」  コーディネター・柄谷行人(評論家) 
 

● 5月11日(日) 舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」

対談者:池田雄一(文芸評論家) 

● 5月18日(日) 舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」

対談者:高澤秀次(文芸評論家)
今後に世界はどうなるのか、どうすべきかを考えたい。私は以前に「歴史と反復」(『柄谷行人集』第5巻・岩波書店)について書いたが、この機会に、それを根本的に再検討したい。 (柄谷行人)
○柄谷行人(からたに・こうじん)主な著書に『近代文学の終り』(インスクリプト)、『世界共和国へ』(岩波新書)、『定本 柄谷行人集』(全5巻、岩波書店)など。
 
○池田雄一(いけだ・ゆういち)著書に『カントの哲学——シニシズムを超えて』(河出書房新社)、共著に『ネオリベ化する公共圏』(明石書店)など。
 
○高澤秀次(たかざわ・しゅうじ) 主な著書に『吉本隆明1945-2007』(インスクリプト)、『評伝中上健次』(集英社)、『江藤淳—神話からの覚醒』(筑摩書房)など。

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