「今」「ここ」 〜高山樗牛
おたく研究家(かれらの間では「おたく」と「オタク」が意識的に使い分けられている)大塚英志や民俗学者・大月隆寛の著書に目をやると、盛んに「今」と「ここ」がセットで登場する。
先日リンドバーグ婦人の『海からの贈り物』を久方ぶりに再読拾い読みをしていたら「〈ここ〉と〈今〉しかない時」という下りに当たる。リンドバーグ夫人は人を島に譬えて、「ここ」と「今」しかない時空の存在こそが島だとした。そうしてジョン・ダンに抗ってみせた。
ここで思い出すのが高山樗牛の「自分が立っているところを深く掘れ。そこから泉が湧き出す」という至言である。樗牛が教えているのは「〈今〉〈ここ〉掘れ、ワンワン」という判断力と決断力と、それを信じて疑わないことの大切さである。むやみに歩き回らず、じっくりと「今」「ここ」に腰を据え、足下に目をこらし、耳をそば立てることだ。それは植物に学ぶということでもある。意外にも、宝は足下にあるのだ。
「〈今〉〈ここ〉掘れ、ワンワン」。
※花粉症で一日一箱ティッシュペーパーを使う勢いだ。環境に負荷をかけているな〜。