平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

兆しを運ぶ鳥のような手帖  〜高月美樹の仕事

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 「LUNAWORKS」 月の働き、月の仕事、いや、むしろ月の仕業とでも訳したほうが良さそうだが、そんな名を会社の表札に掲げた高月美樹さん(あっ、名字に月の文字)の仕業「旧暦日々是好日」が毎年の恒例行事となっている。
http://www.lunaworks.jp/diary/kyureki.html
 これは旧暦手帖とでも云うべき品物で、わたしも使い出して三年が経つ。手帖といってもそこには図版が巧みにちりばめられており、それがあまりにも美しく、悪筆な文字は書き込むことがためらわれ、けっきょく机上に置いて歳時記として拝見している。わたしが三年連続で使わせて頂いていることは高月さんもご存じないだろう。与謝野晶子風にいうなら、右の袂に文のように忍ばせておきたい、そんな手帖である。そういえばKOKONOさんも毎年使っているといっていたし、今年はなにやら特別な使い方をしたいとも云っていた。
 

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 手帖の図版は伊予吉田藩の商人・高月虹器(たかつきこうき・1785〜1825年 いわゆる高月さんのご先祖様)が残した『俳諧活花年賀集』という書物からその一部が抜き出されていて、経年の色の変化がかえってよい味となって目を和ませてくれるし、表裏のカラー扉が特に力があってすばらしい。
 また旧暦故に、二月七日が元旦になっていて、なるほど、これを眺めていれば、節目節目の季語や行事名に合点がいく、そういう塩梅に仕上がっている。

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 「旧暦日々是好日」は、お茶の水の美篶堂ギャラリー(2008.1.29〜2.10 詳細はサイトを)で実物を見ることができ、購入することもできる。上のサイトを拝見すると、銀座伊東屋 他でも実物を拝見できそうだ。LUNAWORKSのサイトからの通販も可能だ。


 高月さんの手によるしつらえの中にそっと置かれた手帖は、それ自体が季節の香りや神の兆しを運んでくる一羽の鳥のような存在である。

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