それを恐れた 2018/06/26
茨木のり子『歳月』(花神社,2007)
「部分」
日に日を重ねてゆけば
薄れていくのではないかしらそれを恐れた
あなたのからだの記憶
好きだった頸すじの匂い
やわらかだった髪の毛
皮脂なめらかな頬
水泳で鍛えた厚い胸郭
兀字型のおへそ
ひんぴんとこぶらがえりを起こしたふくらはぎ
爪がのびれば肉に喰いこむ癖あった足の親指
ああ それから
もっともっとひそやかな細部
どうしたことでしょう
それら日に夜に新たに
(※部分)
◆「脳内探訪」内、関連記事
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/2330.html
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/2373.html
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/2159.html
この場にアップした内容は、その後ペンを入れる場合があります。
バックナンバーはここ↓から。「表示件数」を100件に選択すると見やすくなります。