静岡市歴史文化施設 2018/06/23
まちの中にある動線「ジグザグ」をそのまま建築そのものに取り込んでいく手法には膝を打った。建築家は総じてまちの歴史的文脈を読み解き、コンセプトに取り込むのが巧みである。さすがに19者によるプロポーザルの中から選ばれた案だとプレゼンテーションを聴いて深く納得した(惜しくも不採用となった他の案が公表されるのも待ちたい)。
静岡市に2023年に完成予定の歴史文化施設(建設費32億円以下)は、プロポーザルでSANAA(サナア、Sejima and Nishizawa and Associates)に決定した。妹島和世と西沢立衛の建築ユニットである。建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞も受賞しており、日本国内のみならず、イタリア、スイス、ドイツ、イギリス、オランダ、アメリカなど、多くの国で美術館や大学、ファクトリー、パビリオン、駅舎などを設計している。建築にあまり詳しくなくても、金沢21世紀美術館(イタリアヴェネツィア・ビエンナーレ第9回建築展金獅子賞、毎日芸術賞、日本建築学会賞 各賞受賞)を設計したユニットだといったら、あぁ、あれね!となる方もいるだろう。
ところで歴史文化施設の設計イメージは見えてきたものの、具体的な「使い方」についてはプロポーザルという手法故に、これからだ。市のサイトによれば検討委員会も複数回開かれ、パブリックコメントでも49件の意見を拾っている。ただし、この日のこのような「開かれた平場」が、プロポーザルの前にもっとたくさんあってもっとよかったのではないかと思うのは浅学か。
◆外観イメージ
http://www.shizuoka-bunkazai.jp/project/images/画像2%28歴文建物外観%29リサイズ済.jpg
◆パブリックコメント
http://www.city.shizuoka.jp/000714230.pdf
◆検討委員会議事録等
http://www.city.shizuoka.jp/701_000034.html
この歴史文化施設における展示コンセプトは、「今川」「家康」「東海道」だという。もちろんそれも立派な歴史の在り方・見方だが、一見トッピックになりにくい「日常という歴史」をどのように汲み取っていくのかも大切だろう(この土地そのものに重層的にある歴史を見ていくことも大切なことだ)。
歴史というと、過去の出来事に目が行きがちだが、この施設では「静岡の未来史」をどのように編んでいくのかという議論の場(機能)を持つことが大事だ。過去の歴史を生きた情報にするには、それらを「いま・ここ」から未来に向かって折り返し、重ね合わせて予測することだ。つまり、歴史に学ぶということだ。それについてはわたしも、活動組織を含めた多少のアイデアがある。
また、この施設から発信することのベースにあるのは、「SDGs(持続可能な開発目標)」で、静岡市から世界へ向かって平和都市宣言をおこなっていくのだそうだ(「平和都市・静岡」)。いきなり世界平和を、といってもイメージが湧きにくいだろう。ダウンサイズして、自分ごととして捉え直すことがポイントになりそうだ。
ところで相変わらず、ハードはつくったが、ソフトが議論されていないという批判を耳にする。建築家の偉い先生がつくった建物があっても中身が伴わないと意味がない、という声も聞こえてくる。確かにその通りだろう。だが、ことはそんな単純な話ではない。建築を識らない人たちは、機能だけの話をする。だが、機能だけでは具体的な拠点はつくれない。そこにはやはり優秀な専門家が必要なのである。拠点や機能としての建物そものがいかに重要かは、3・11など、このところ頻発する大規模自然災害とその後の対応が教えてくれている。
もうこのソフトとハード、モノとコトのように、案件を二項対立に分断して考えていくのはやめたらどうか(モノとコトも単純に別けられない)。
わたしは、この歴史文化施設に大きな期待を寄せている市民のひとりである。
(↓)歴史文化施設建設予定地である旧青葉小学校(閉校から11年、この7月から解体工事開始)では、取り壊しの前の6/17SUN に「生まれ変わりの文化祭」が行われた(シズオカオーケストラ主催)。この日、最後のプログラムとして、屋上プールを会場にトークが行われた。
(↓)女優の伊澤恵美子さんが、この小学校を舞台に写真集を制作、当日も展示を行っていた。久しぶりにご本人にもお目にかかれた。
◆伊澤恵美子オフィシャルサイト
http://emikoizawa.com
◆伊澤さんに初めてお目にかかったのは2011年
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1656.html
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