平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

回答のしりえに添えること   2017/07/09



たぶん年齢のせいだろう、ここ十年、相談を受けることが多くなった。
そもそも、仕事のほぼすべては、相談ごとと言っても言い過ぎではない。困っているから相談に乗ってね、それが仕事というものなのだ。だが、わたしのところにやってくる相談ごとのほぼすべてがわたしの「仕事」とは直接結びつかない。ただし、自分で言うのも何だが、わたしは、相談されたことついては、そのときに思いつくかぎりの経験というアプリを立ち上げて真正面から答えようと努力をする。時には、時間をかけていっしょにある第三者に会いに行ったりもする。なぜそんな面倒なことをするのか。なぜなら、そこで得られる第三者の言葉が、またわたしの回答を越えて、あるときには矛盾を孕みつつ、わたしの回答に厚みを与えてくれるからである。その醍醐味がわたしを行動に駆り立てる。

それはそうと、悩み事に対して一通り、自分なりの回答が終わると、わたしは、何となく最近読んだ本のこと、観たお芝居の内容などを添えてみる。手紙で言えば、「追伸」みたいな位置づけかもしれない。その場では深い意図はなく語る、ただ何となく、である。だが、面白いのはそのときの相手の反応である。不思議なことに相談者は、わたしの正面からの回答とそこに添えた本やお芝居の物語を勝手に編集して、自分の回答を見つけ出して晴れやかな顔を見せてくれることが多い。

「先ほどの回答と今の本の話は、そういうことで繋がっているんですね」などと、「正しく誤解」をしてくれるのだ。

なるほど、ひとは何百行もの本文よりも、しりえに添えた数行の追伸に本音を込めたりするものである。


追伸:最近のマイブームなんですけど、「みうらじゅん」なんですよ。



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