恐怖の仕事だ 『楳図かずお論』 2015/10/21
化け物のような『楳図かずお論』(青弓社,2015)に遭遇した。副題は、「マンガ表現と想像力の恐怖」、著者は高橋明彦。金沢美術工芸大学教授とある。これまでに手塚治虫論を書いた100人の先達の仕事をたった一人でやってのけたような質量である。
以下目次はその一部で、本書では各章が更に細かく記載されているが、それがそのまま論理の構造を示している。これだけで、既に読み応えがある。
本書の表4の読書案内にもあるように、主題論・作品論・表現論・文献学を総合して楳図作品の全貌を読み解く試みだ(完成度に関しては、著者自身の言葉があとがきに記される。p.423)。作品目録ですら孫引きなのではなく、自らがきちんと掲載誌等に目を通していることがよくわかる。今までのマンガ論では、他に類をみない仕上がりとなっている。
手塚論にもこのような仕事が欲しいものだ。
ともかくも、この仕事が「恐怖」そのものである。
[目次]
第1章 楳図かずおの恐怖概念
第2章 わたしは真悟、内在する高度
第3章 子どもと暴力-「子供は遊んでばかりいたのかな?」
第4章 洗礼、その身体と記憶
第5章 ぬばたまの夢やは実在を思はする神の左手悪魔の右手-楳図かずおと世界の創造
第6章 タマミの御霊-『赤んぼ少女』と鎮魂の問題
第7章 楳図かずおのコマ割り理論
第8章 マンガにおける二つの省略-マンガ表現論の構造
第9章 ペコの左手アクマの右手-描線論、または松本大洋『ピンポン』における超越と内在
第10章 復刻の形而上学-版の概念をめぐるマンガの諸問題
第11章 イアラ、典拠と出来事、言葉と反復
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