「鳴き出でよ」 2015/09/21
先達て、元静岡市の職員だった山本インテリジェンス正幸さんが、『西田幾多郎全集』(岩波書店 全19巻)を譲ってくださるというので、気が変わらぬうちにと大急ぎでかの玄関ベルを押し込んだ。
挨拶もそこそこに、下駄もきちんと脱がない勢いで茶室を備えた邸宅に上がり込み、しばらくの間書棚をなめるように見つめ、話題は古井由吉で盛り上がり、山本さんから『詩への小路』(書肆山田,2005)を勧められた。わたしも古井作品はリアルタイムで気に掛けてきたが迂闊にもこのタイトルは見落としていた。さっそく、入手して読み始めたら、案の定いくつもの言葉に遭遇し、そのたびに足が竦み、前へと進めなくなっている。
「豚に真珠というところか。私などには所詮活かしようにもなかった知識を、若い頃にはあれこれ溜めこんだものだ。あんな無用な事どもを覚える閑があったのなら、今ごろはとうに失われた町の風景でも、もっとつくづく眺めておけばよかったのに、と後年になり悔やまれることもあったが、さらに年を重ねて、それらの知識もすっかり薄れた頃になり、その影ばかりに残ったものが、何かの機会に、頼りない足取りながら、少々案内をしてくれる。(後略)」(「鳴き出でよ」『詩への小路』書肆山田,2005)
さて、いよいよ西田のリリードだ。
◆口に出すことで、考えられる。
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