平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

ここ二週間の備忘録  2015/06/30

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仕事が鎖のようにつながっていて、この「脳内探訪」をまったく更新できないでいる。
今年は、かつてないほど、仕事が過酷である(毎年言っているような気もする)。
備忘録のために、ここ二週間の様子をざっくりと書きとめておく。



■静岡市美術館で、『青磁のいま』を観る。
先ず、この展覧会は骨太な展示構造がいい。
第Ⅰ章では日本に伝来した中国・南宋時代(12~13世紀)の官窯や龍泉窯の名品で、目を養うことになる。東アジアの漢字文化圏には、多彩な「青」のつく言葉が存在するが、それはこの青磁文化によって磨き上げられた言語感覚によって産み落とされたものかもしれないとさえ思えてくる。
釉薬に含まれるわずかな鉄分が還元焔焼成によって青を発色させ、それがまたガラス質の釉薬のなかにほぼ永遠に包み込まれてしまうと考えれば、なんともロマンチックではないか。
第Ⅱ章では、南宋青磁への憧れとも言える古陶磁の本歌取りの世界を見せてくれる。
そうして再現を通して培った思想と技術は、青磁に遊び、青磁に挑む今を力強くも繊細な青と肌理で見せてくれる。それが第Ⅲ章の展示である。
この一連の展示設計が、「受け継がれた技と美 南宋から現代まで」の悠久の時間と呼応している。

もう一点記しておくと、この展示は照明が実にいい。限られた照明機材と予算だろうが、その中でいかにして青の色と肌理を出せるかということに挑んでいる。

一見すると地味な展示だが、一点豪華主義の昨今の展示にはない、学芸員の思いが垣間見える。金の縁を模したチラシのデザインがまた目を引き(金は特色に見えたが実際には4色掛け合わせだろう)、3タイプの青磁作品をかたどった告知ツールがまたひじょうにユニークである。告知もうまい。

個人的には、石黒宗麿「青瓷氷裂盌」の二重貫入の涼しげな裂美、鍾乳洞のようなぼってりとした釉の溜りのある岡部嶺男の「粉青瓷茶盌」などは、順路を逆戻りして繰り返したのしんだ。


● 静岡市美術館公式サイト
http://www.shizubi.jp/exhibition/future_150613.php


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■『杉戸洋 frame refrain』(ベルナール・ビュフェ美術館)を観る。
改めて、眼や額縁、作家によって書き込まれた線によって、世界から切り離された(切り離すための)フレームというものを意識した。

最終日にあわせて行われた対談「杉戸洋(作家)×椹木野衣(美樹評論家)」を最前列で聴く。
これほどまでに、かみ合っていない対談をわたしはここしばらく見た記憶がない。その話しぶりは、途中、二人の間に張りつめた空気を幾重にも横たえることとなった。
最初に断っておくと、それはけっしてつまらなかったという意味ではない。予定調和のある対談よりも、比較にならいほど面白かった。筆が滑って思わず、かみ合っていない、と書いたが、そう書いた自分の言葉に違和感が残る。リズムが合わないと言った方がより感覚に近いのかもしれないが、だがそれとも違う。批評家が作家を追い込んでいった対談だったと言った人もいるようだが、わたしの感じ方はそれとも違う。一重に思考速度という回路の違いではなかったか。どちらが上という意味ではない。

途中、見かねたのか、担当学芸員とおぼしき担当者が、杉戸さんが用意してあったスライドを観るように促したが、椹木さんは、さすが司会!といいながらも、作品集に切り替えるでもなく、再び自分のつくった動線へと話を引き戻していった。椹木さんの運びは素晴らしいかったし、杉戸さんの思考する速度にも好感をもった。一見するとまったくかみ合っていないようだが、とにかくよくできた対談であった。

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Connecting man plate B no.1(2006)

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■今年2015年 静岡音楽館AOIが開館20周年(1995年開館)を迎えた。
AOIは地方の公共ホールのなかでも早い時期から芸術監督制度を取り入れ、学芸員もおいた。自慢すべき静岡の宝である(AOI小林旬学芸員の論文「なぜ、静岡にオーケストラは必要なのか」『静岡アート郷土史プロジェクト 芸術批評誌 DARADAMONDE』VOL.4,p.29,2015 には力があった)。

記念式典当日に演奏された作曲家でピアニストの野平一郎芸術監督の「華麗なる大円舞曲」が強く心に残った(小学生のころの音楽体験で、ショパンというそれだけで「別れ」という言葉が浮かんでしまう。お目出度い席なのに)。
作曲家・間宮芳生AOI初代芸術監督のオペラ『ポポイ』(2009年初演)が、静岡県舞台芸術センター(SPAC)芸術総監督・宮城聰演出によって再演された。『ポポイ』については、そのうちまとめて書くことにする。

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■水族館劇場の芝居『兇状旅 駿河篇 黒船前夜』(作演出 桃山邑)
「天下国家の一大事だってぇ?知ったこっちゃあるもんか、おいらたちにゃぁ関係ねえよ! 」

Aさんの粋な計らいで、桃山さんと直接話ができた。


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■静岡大学 人文社会科学部 比較言語文化各論(今野喜和人教授) 静岡県立美術館との共同授業 ロダン館ギャラリートークを今年度もお手伝いしている。
ギャラリートークは、以下の通りである。
※ロダン館の入館料、一般300円のみかかります。

【7月11日(土)】
・午後1時〜 発表者:岡田理沙  解説作品:カレーの市民 第1試作を中心に
・午後1時25分〜 発表者:森脇琢矢   解説作品:考える人

【7月12日(日)】
・午後1時〜 発表者:竹村彩香   解説作品:ラ・フランス
・午後1時25分〜 発表者:橋本かなこ  解説作品:カレーの市民
・午後1時40分〜 発表者:斉藤温奈   解説作品:地獄の門



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■静岡大学 静岡大学アートマネジメント力育成事業が今年度もまた始まった。
とにかく膨大なカリキュラムである。
企画をする方もたいへんだが、ついていく方もたいへんだろう。
自信をもって言えるのは、素直に学ぶ人は間違いなく力がつくということだ。


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■ふじのくに文化情報センター主催「ミニ講座 こかげのまなびば」が6回目を終えた。月に二回程度、静岡県コンベンションアーツセンター グランシップ 1階 センターならび(ドア一枚隣)のカフェで行っている(静岡市駿河区池田 JR東静岡駅南口)。
前回のテーマは、「補助金をとりにいこう!」。
補助金を取る側と、出す側の「溝」があるとすればいったいそれは何か。
より具体的な講義内容に対して、参加者からは矢継ぎ早の質問がとぶ。

次回「こかげのまなびば」は7月8日(水)18時30分から開催。毎回、講師が20分〜30分程度話をして、あとは参加者でディスカッションしています。お気軽にご参加ください。


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■とても心地の良い空間だった。
眼下に見える山肌と海原。目の前には、絵本の原画が並ぶ。ゆったりとささやきかけるように言葉を放つ、もと福音館書店の編集者がオーナーのこの空間は、しばらくだれにも言わないでおきたい(きっとそのうちばらします・笑)。


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■企画は持ち込みじゃなくて、関係性のなかで自然と生まれてくるものこそ大事に育てたい、というW氏の考え方に心が揺さぶられた。


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■三島の人たちは想像以上に元気でした(「第1回三島交流オフ会」川村結里子さん主催)。
「みしまびと」が仕掛けるフィルムも間もなくクランクイン!

・みしまびと公式サイト
http://mishimabito.com



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■8年以上、連載してきたあるシリーズだが、次号で幕引きを決めた。
最後は、スペースの関係でこれまで掲載できなかった主な参考文献と日本の古層にある雅楽を書いて終わろうかと、只今、思案中。


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■ここ十数年、コピーライターの仕事(に対する態度)に強い不満をもってきた。ということをあちこちで何度も話してきた。

これからスタート地点に立とうとしているSさんには、何が大切なのかをよーーーく考えて、いいコピーをたくさん創って欲しいと強くおもう。


「いい曲は、企画書からは生まれない。」(サントリー ホワイト)
「知性の差が 顔に出るらしいよ ……困ったね。」(新潮文庫)
「知性って、すぐ眠りたがるから……若いうちよ。」(新潮文庫)
「おしりだって、洗ってほしい。」(TOTO ウォシュレット)
「ケンカはやめた。だから、もう負けない。」(パルコ)
「こんなに憎み合うのは、あんなに愛し合ってたからですか。」(パルコ)
「人類はアブナイものをつくり過ぎた。」(全国農業協同組合 「いのちの祭 - 風」 農協)
「人類は、 男と女と ウォークマン。」(SONY ウォークマン)
「新聞を開くたびにギシギシ音がするような なんだか息が苦しい世の中だから やわらかな味が好まれるのかも知れない」(味の素 セネラルフーヅ ブレンディ)
「できれば、あなたと、くっつき虫。」(岩田屋)
「顔は、ハダカ。」(コーセー・アンテリージュ)

これらはみ〜んな仲畑貴志さんの仕事。

その仲畑さんが、こんなことを言っていました。

「チャーミングなコピーは、チャーミングなやつにしか書けないんだから。」

「いいと思った広告を10個選ばす。それが全部カスだったら、その人がめざすゴールがカスなわけで。だから採らないな。」



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■恩を仇で返す。
自分は注意したいと強くおもう。



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