光創起イノベーション研究拠点棟のトンネルは、哲学する道である 2015/03/12
「時空を超えて光を自由に操り豊かな持続的社会を実現する」光創起イノベーション研究拠点棟(国際科学イノベーション研究拠点)が、静岡大学浜松キャンパス内にオープンした。静岡大学、浜松医科大学、光産業創成大学院大学、浜松ホトニクス(株) が共同で組織する研究拠点である。
「様々な場所での多様な生活を営むための持続的社会システムの実現を目指し、光の波長・位相・強度について“時空を超えて自由に操る革新的研究”を課題とします」 が、この研究棟で行われる研究のテーマである。
その研究棟の一階、二階部分のコンセプトワークを担当した。具体的なカタチにしてくれたのは、アトリエ・ピアニシモの仁科玲子さんである。
わたしがスタッフと共有するためにまとめたノートをアップしておく。
ちなみに、棟の一階部分は、「トンネル」(片側はショーウィンドウ)になっており、学生や研究者らが日々行き交う、往来になっている。
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【光創起研究棟 一階の位置づけについて】
かつて、哲学者の西田幾多郎(1870-1945)は、京都市左京区にある琵琶湖疎水分線に沿った道を歩きながら思索を重ねた。西田は、日々の「散策」という仕方で、日本で最初の本格的な哲学を打ち立てたのである。やがて西田の歩いたその道は、「哲学の道」と称えられ、人々はその面影を感じながら、今でも四季の花咲く「哲学の道」を踏み歩くのである。
光創起研究棟の一階スペースは、不思議な空間である。建物の中のようであり、常に外に開かれた場である。日々、多くの学生や研究者、医学者、企業人らが行き交う場である。だがそこは単に「通路」ではない。「考える」トンネルであり、「創造する」大屋根であり、「稽古する」空間でもある。
ちなみに、稽古とは、「古(いしにえ)を稽(かんが)える」と読む。それは先達の研究成果に繰り返しあたり、自分の考えをそこに重ねて行き、新しい発想を生み出すこと。すなわち武道や茶道における稽古とはこれを意味する。
光創起研究棟の一階スペースは、まさに、先達の研究に触れ、未来を創造するための「道」であり、ここを「気づきの道」と名づける。
【「気づきの道」で先達の気配を感じながら、議論し、創造する。】
光創起研究棟の一階空間にあるショーウィンドウには、先達(例えば、静岡大学いえば高柳健次郎先生、あるいは共同研究機関である浜松医科大学、光産業創成大学院大学、浜松ホトニクス株式会社の創始者など)の研究・開発にまつわる物語のある「物」とセットで、その人物を強く感じる肉筆の文字を展示する。
→時代のエポックとなった研究論文やメモ、手紙類、下書き、設計図、部下に指示したメモ等々、なるべくリアルな書き込み等がある方が望ましい。
→可能であれば、年に3〜4回展示替えをおこなう。
→展示が生きるも死ぬも「見せ方」(ディスプレイ)がポイントとなる。見るだけではなく、「係わる展示」が重要。それは必ずしもデジタルである必要はない。
→ショーウィンドウの前には、ホワイトボード、テーブルと椅子(ベンチ)を用意。可能であれば2〜3組設置する。あるときには、学生や研究者らはベンチに腰掛け、ランチを楽しみ、止まり木でさえずる鳥のように時を忘れて議論する。
オックスフォード大学のキャンパス内には、アイデアを思いついたらすぐに書き込めるボードがいたるところに用意されているという。そこではすぐに議論がわきおこる。次にそこを通りかかった者が、前の書き込みの上に更に書き込みする。それ見た者、そこに立ち止まった者が、書き込みを見て想像もしなかったことを発想する。
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