平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

着物でお出かけくださいませ

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 某メディアSさんから冷やかしのメールを頂いてふと思い出した。
 平野の講演会や講座にはきまって着物の追っかけがやってくる、という流言飛語、巷話である(爆笑)。まさか編集の達人SMさんじゃあるまいしねぇ(わかる人にはわかる)。
 いやまてよ、思い出すと確かにそうかもしれない(自分のサイトのため言いたい放題)。あの方もこちらの方も確かに着物で来てくださる。なるほど、人の目には「いつも」と、そう映るのだろう。
 男性は大正12年の大震災以来、女性の場合には昭和20年の戦災以来、日本人は着物を着なくなったという(昭和7年の白木屋デパートの火災という説が根強いが井上章一氏が否定)。そんなわけで着物がすっかりお稽古ごとの鎧になってしまった昨今、日常生活で着物に袖を通す方は、わたしの周りには十指いらっしゃるかどうか。
 着物を着なくなった、それでいったい何が起きたかというと、和の色名、柄や文様、意匠の名をすっかり継承できなくなった。衽下がり、合褄幅、衵、綸子、絖、綟、これらをいったいどれくらいの人が、すぐさま読めて、着物の部位や素材を言い当てられるだろう。怪談話でも、絹の擦れる音が障子越しに響いて、ひゅ〜どろどろどろ〜なんて言っても何のことやら、何もこわくなんかない。
 今、京都の蚤の市では、男性着物がお買い得値で放出されていると聞く。思いつきだが、カップルで着物を探し歩き、そのあとその着物を使ってファッションショーをする、そんな企画はどうだろう。テレビ向きだな(ぶつぶつ)。
 これからもみなさま、講座や講演は日本文化継承のために着物でお出かけくださいませ。男性のみなさまも、ささ、どうぞ。

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