スイスの建築家 Peter Zumthor のいう光と影 2014/01/12
建築家 大橋史人さん(FOAS代表)のはなしをうかがう(於・カフェ ロコマニ)。
話の素材になったのは、彼が9年前にヨーロッパを約一ヶ月間かけて巡った旅のスライド。
とりあげられたのはスイス出身のふたりの建築家。Herzog de Meuron とPeter Zumthor である。
Peter Zumthorに関しては昨年末、偶然、読書がすんだばかりであった。『ペーター・ツムトア 建築を考える』(みすず書房、2012)という一冊である。よくズントーという名前を聞くのは、彼ツムトアのことである。
この本の扉に掲げられた杉本博司のモノクロ写真がツムトアの代表作のひとつ、聖ベネディクト礼拝堂(Saint Benedict Chapel 1989)を実によくつかまえている。スイスはスンヴィッツという山中にあるこの教会は、本来ほとんどのそれがそうであるように、村人たちに愛される小さな(といっていいと思う)教会である。
そもそも建築とは、場所やその場の条件を抜きにしては語り得ない。そういった意味で、このスイスの空気の中に建つ小さな教会は、空気を孕んでこんなふうに見えるのではないかと思わせるのが杉本の件の2枚である(何とも言えない写真である)。
光と影について、発言を繰り返すツムトアは言う。
「〈風景のなかの光〉。オーストリアの詩人フリーデリケ・マイレッカーは、さまざまな翳りをみせる、きわめて自伝的とおぼしい詩集に心象としてこのタイトルをつけた。ひとつひとつ重ねられる言葉の素材が心の内外に風景を描き出し生み出すなかで、詩行はくり返しその翳りを破り出て、輝く。
個人の抱くさまざまな風景。憧れ、人を喪った悲しみ、静けさ、歓喜、孤独、安心、醜さ、傲慢、誘惑などの心象や風景。私の記憶のなかでは、どれもがそれぞれに固有の光をおびている。
そもそも光なくして事物を想像できるだろうか?」(p95)
このあと谷崎を引いて語るスイスの建築家の言う光は、すなわちカゲのことである。もっといえば、光とカゲの同時性ということである。
○建築・聖ベネディクト礼拝堂の関しては、浜松市自然素材木造住宅 大林勇設計事務所さんのblogに詳しい。
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