平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

資生堂アートハウス 「京都艶艶 京都と現代工藝展と資生堂」 2013/11/04

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( ↑ )新幹線の車窓からも見えるアール・ヌーボースタイルの資生堂アートハウスは、高宮真介、谷口吉生両氏の設計により、1978年(昭和53)に開設された。真上から見ると、資生堂の頭文字「S」をかたどっていることがわかる。外壁はメタリックシルバーの磁器タイル、ミラーガラス、そしてステンレスの目地で仕上げられている。

谷口吉生作品にはこのほか、清春白樺美術館(1983)、土門拳記念館(1983)、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館・丸亀市立図書館(1993)、豊田市美術館(1995)、東京国立博物館法隆寺宝物館(1999)、ニューヨーク近代美術館・MoMA新館(2004)、鈴木大拙館(2011)などがある。
わたしは土門拳記念館にも鈴木大拙館にもまだ足を運んだことがない。一度は訪れてみたい。



静岡の某書店の美術書のコーナーには、舟越保武と舟越桂が並べて置かれている。五十音で棚をつくっていて、たまたま隣同士になったのか、それとも店員がこの二人を親子の関係だと知っていて並べたのかは定かではない。知っていたとしたら、その2冊を抱き合わせで読んで欲しいと思ったのだろう、その行為に深く共感を覚える。

資生堂アートハウスで「京都艶艶 京都と現代工藝展と資生堂」を観る。
なかでも足を止めたのは、志村ふくみの10点の紬織着物(前期1986-1991 5点、後期1992-1995 5点)と、2体が並べて展示された舟越保武、舟越桂の作品だった(舟越親子の作品は常設)。

小品ながら舟越保武の「笛吹き少年」(1964、ブロンズ)は静謐な空気が漂うし(広島市まんが図書館前の「笛吹き少年」や清瀬市にあるそれよりもサイズがかなり小さい)、圧倒的な存在感のある舟越桂の「唐突な山」(1995、楠に彩色、大理石)の半身像は同じ静謐さでもその質が違う。前者は風をわずかにふるわせて聞こえてくる音が少年の存在そのものであるかのようだ。
一方、桂の「唐突な山」は、モティーフとなった男の半身像の存在感といい、胸板の厚さといい、まさに目の前に「唐突」に現れた山のようである。山は作品の前に立った者の見立てにもなろう。
それにしても、桂の半身像の特徴の一つである「首の長さ」が、それだけで異形だし、見る者にある種のメッセージを放ち続けられる大きな要因となっている。





志村ふくみの作品を眺めていると、着物というのは衣紋掛けに掛けた姿でも、実はこんなにも美しいものかとため息が出る。圧倒的な存在感である。そうしても、段暈しや経糸・緯糸の織りなす表情などのテキスタイルの美しさはもちろんのこと、作品に付けられた名前、たとえば、伊吹、玉水、絲遊、糸巻貝、靫など、日本語の多様性に驚かされる。万葉集、「降る雪はあはにな降りそ吉隠の猪養の岡の 寒からまくに」(※ママ)からとられた「吉隠」は何とも美しい言葉である(しかし「よなばり」という地名を読める人はいったいどのくらいいるのだろう)。

志村ふくみは言う。 

私は「日本伝統工芸展」に作品を出品した時、これは個人作家の仕事だと、「あなたはもう民芸じゃない、民芸から出て行きなさい」と柳先生(※柳宗悦)から破門を受けました。
(中略)
柳先生は何人かの志を一緒にした者が仕事をする「民芸ギルド」というものを作られて、それは時代が少し早すぎたせいか、成功しなかったわけですが、これからはそういう時代が訪れるんじゃないかって気がするんです。
やっぱり、個人作業の限界は多くの人が感じていますよ。陶芸でも漆でももうやり尽くしているように見えませんか。天才の活躍した時代はもう終わって現在の作家たちは皆で力を合わせて良い物を作らなきゃならないんじゃないでしょうか。
ところが物を作る人たちは芸術家だとか、アーティストだとか、妙に高ぶった気持があって、柳先生が言われた民芸なんて古くさいと思ったのでしょう。ですけれども時代を終えてみれば少なくとも工芸においては富本先生(※富本憲吉)や芹沢銈介先生たちが作られた、それ以上のものはなにも出ていないじゃありませんか。時代というのは、そしてそこに生きている人間というものを冷静に認識して、これからの時代どうしたら良いのか考えていかなければなりません。

     2013年8月16日 京都嵯峨野 志村邸にて
    本展覧会のためのインタビュー (※会場にて写す)




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○逢魔ヶ時の姿とデーライトでみる館の印象はかなり違って見える。
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1506.html



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