絵本学会の分科会でお伝えしたかったこと 2013/06/16
【注意】会場では許可を取って撮影していますが、本ページの作家の写真を二次使用する場合には、関係各位に許可を取る必要がありますので、ご注意ください。
去る2013年6月15日(土)・16日(日)の両日にわたって行われた「第16回 絵本学会」に参加した。
二日目のランドテーブル(分科会)「モノとしての絵本」で、わたしが問題提起したことを手短に書けば、分科会のテーマにもなっている「モノ」は、単に「モノ」と「コト」にわけられるような単純な話ではないということだ。
コーディネーターが冒頭で、「モノ」について整理されたが、それによると「モノ」とはマテリアルであり、スピリットとは対極にあるということだ。
だが、日本語の「モノ」は、ものがなしい、もののけ、もののあはれ、ものがたり、(勝手な)ものだよ、などの例が示すように、これらの「モノ」は単に物質だけをいっているのではない。そこがこのテーマの厄介な部分でもあり、逆に面白い部分でもある。わたしは単に言葉遊びで言っていない。それは、この日登壇されたアーティストの藤本由紀夫氏が試みられている本の実験アート(ご本人の言葉でない)がむしろ、わたしのいわんとしていることを体現化し、本来あるべき本の可能性を示唆しているのではないだろうか、ということである。要は、その根底にある考え方は本を単に「モノ」として切り分けない(られない)ということだ。藤本さんの実験アートは、わたしなりの解釈でいえば、「本」は、敢えて「モノ」と「コト」にはわけられないといっているのではないか。
また当日、藤本さんがラスコーやラス・マノス洞窟を引用しながら言っておられた「洞窟は一冊の本」であるという提示だが、それに倣ってさらに具体的にいえば、「洞窟は絵巻物」であるというのがわたしの考えだ。それはダブルページの本ではなく、絵巻物という媒体。洞窟も、絵巻物も、その途中にいきなり介在することはできない。一般書籍のように、いきなりあとがきを読むことは不可能である(もちろん不自然だが方法はなくもない)。初めがあって、終わりがある。特に壁画の描かれた洞窟は読み手という媒介者を伴って時間軸に沿って展開していく物語絵本そのものであろう。
また洞窟の例を挙げるなら、港千尋氏や土取利行氏らの学問やアート活動の存在は脇に置くことはできないだろう。
本来であれば、あの場で議論を深めたかったが、会場に質問がふられたのがもはや終了を15分以上も超過して後だったために(理由はあの場にいた方ならよくおわかりであろう)、わたしも空気を読んだ、ということを含めてここに記しておく。
( ↑ )2013年 第16回絵本学会大会 於)静岡文化芸術大学 日時:2013年6月16〜17日
基調講演のため足を運ばれた絵本作家スズキコージさんが大会の看板にイタズラ書き。
この看板、表面の紙は糊でしっかりと貼り付けられており剥がすことはできない。保存は大きな看板ごとするしかないのか(苦笑) スズキコージファンとしては、真剣に欲しい(笑)
( ↑ )第16回 絵本学会実行委員会委員長・鈴木善彦先生。元静岡県教育長、静岡県立中央図書館館長などを歴任され、さまざま改革で成果を上げる。わたしの尊敬する人物の一人である。
( ↑ )絵本学会会長・松本猛さん。絵本作家のいわさきちひろさんのご子息でちひろ美術館常任顧問。松本さんの「この学会は窓口を広くとり、研究成果は高見を目指す」という態度に共感する。
( ↓ )スズキコージさん講演会会場にしつらえられたフラッグ(ご本人は「こしまき」と表現された。ステージ袖に使用する目的か。聞き逃した)は、スズキコージさんが10年以上前にバリ島で制作した約50枚のバティック(臈纈染め)の一部。
講演内容は、浜松出身のスズキコージさんの想い出話、昨今の仕事並びに絵本制作の秘話である。
想い出話をして、それが講演になってしまい、そのまま絵本の歴史になってしまうなんて、やはりすごい。
( ↑ )本大会の実行委員でもあり、会場にお見えになっていた絵本作家 あの「たいこさん」で有名な長野ヒデ子さんもスズキコージさんの呼びかけによって急遽、登壇した(笑)
◎長野ヒデ子さん公式サイト
http://www.taikosan.com
◎脳内探訪内のスズキコージさん関連ページ
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1323.html
【注意】会場では許可を取って撮影していますが、本ページの二人の作家の写真を二次使用する場合には、関係各位に許可を取る必要がありますので、ご注意ください。
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