平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

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 世界のグルメたちを唸られるスペイン料理のレストラン、「エル・ブジ(ブリ) EL BULLI」をご存じだろうか。世界最高峰・至極の味と讃えられるこの店のすごいところは、そのレシピを惜しげもなく公開していることだ。これによって、スペイン料理全体がレベルアップしたといわれている。こういうことは、他のジャンルでは考えにくい。
 例えば、企業の存続とは、いかに自分たちの味や技術を隠し続けるかという歴史である。秘伝や口伝もまた同じである。だがエル・ブジの執った方法はそれとはまったく逆であった。レシピ(技術)を公開し続けるということは、すなわち、自分たちを追い込むことに他ならない。この切磋琢磨が、けっきょくマーケット全体をレベルアップさせたのだ。

 わたしはここ十数年、天才といわれる人々と接する機会を多く頂いた。彼らの特徴は常に「過剰」ということだ。とにかく何をやるにも莫大で膨大で存分なのだ。ある意味ストッパーが壊れているともいえる。そうしてもう一つの特徴は、見られる、盗まれることにおおらかなことだ(ここでは、だから商標等の問題でこんなにゴチャゴチャするんだよ、中国を見ろ!という議論はなし)。それは結果的に、技術と方法というレシピを惜しげもなく公開しているということなのだ。

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