松葉を拾い上げて 2012/12/01
「枯れて落ちても二人連れ」。松葉の形状にそんな粋な言葉を添えたのは、果たして江戸の歌人であったか、もはやひどい記憶力で覚えてもいない。そういえば、松葉をあしらった熨斗の意匠もあるが、こちらは謙遜して「松葉ほどのささやかなものですが」の意味。
江戸小紋の伝統は多くの松葉の意匠を生み出してきた。日本人の地面に降り敷く松葉を美しいと思う感覚は、やはり「美事」というほかない。
今、大学の駐車場に向かうアスファルトの上には松葉がいっぱい敷き詰められている。興味のない人にとったら、ただの枯れ葉、ゴミ、そんな程度のものである。大方、枯れて腐って、雨樋が詰まって大迷惑だというのが関の山。ちがう、ちがう、迷惑だ、不愉快だ、と思っているのは松葉の方だ。
機会があれば、拾い上げてご覧なさいな。最新鋭のガジェットばかりを崇めていないで、まさに足下をみないとね。
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※今日現在、twitter上でつぶやかれている平野雅彦さんは、私平野雅彦ではありません。
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