平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

NEWSPAPER  FASHION SHOW  2012/11/03

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すべてはこの『華氏451』の見立てから始まった。



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この学生のテーマは「製品と商品」。主に地域を元気にする製品とサービスを中心に情報を追いかけるために、あえて地元「静岡新聞」の記事だけを使って衣装を制作している。

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東海大学短期大学部 経営情報学科「広告技法」の履修生たちと、大学祭(柚木りんどう祭)の舞台で、ファッション・ショーを企画した。
題して『NEWSPAPER FASHION SHOW 2012 in TOKAI junior college』

簡単に言えば、「時代のワンテーマを着る」をコンセプトに、新聞紙を使って衣装を製作し、ファッション・ショーを開催するなかで、この時代における新聞というメディアの可能性を再検討するという企画である。テーマは、「製品と商品」 「昨今のブライダル事情」 「スポーツビジネス」 「スーツ」 「デザインの反逆」などである。

実は、東海短大(静岡)経営情報学科のカリキュラムには「ファッションビジネス・フィールド」が用意されていて、そこではファッションビジネス論が学べるようになっている。もちろんわたしは門外漢だ。だが、その門外漢があえて、「伝えるとはどういうことか」を芯に据え、ファッション・ショーに挑戦することには一つの価値があるのではないかとわたしは考えた(許していただきたい)。


【企画の背景】
ネット端末の急速な普及により、若者を中心に新聞紙を手に取る機会が著しく減ってきた。携帯電話やスマートフォンでサイトやニュース、情報をザッピングし、「欲しい情報」のみを選択的に手に入れる社会になりつつある。
だが従来の新聞紙という総合情報媒体は決してザッピングでは入手できない肉感的な情報の集合体であるともいえる。そもそも旧来の新聞は、ボタン一つで他の情報へジャンプすることはできない。自らの編集能力で他の情報とつながっていく能力が求められるのだ。そういった意味で旧来の新聞というのは「閉じられた系の媒体」とも言える。云々。
本企画では、ネット情報とも共有しながら、新聞(紙)に触れる機会を取り戻すことで新聞の在り方を考えるチャンスとする。同時に、新聞には何ができて、何ができないのかも議論する場になるだろう。

【企画の概略】
・一人一冊
作家レイ・ブラッドベリに『華氏451』がある。未来社会において、思想の統一をもくろむ政府は、これまでに人類が作りだしてきた膨大な書物を焚書する。だがそれをよしとしない人々は、「自分自身が一冊の書物」となりきり、その本を記憶・暗唱し、書物というテキストを次代に残そうとするのである。この「一人が一冊になりきる」という物語にヒントを得て、「一人ひとりが、時代のワンテーマを着る」というコンセプトをもってファッション・ショーを試みる。
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1821.html

・時代のワンテーマを着る
新聞紙、しかも自らが選んだテーマの記事を集め、読み込み、それらの記事で作った衣装を着てのファッション・ショー。それはそれぞれが自分のテーマに持つことであり、興味の焦点を絞ることであり、自分自身が新聞そのものになることでもある。この一連の行為によって、新聞(紙)という媒体の可能性を再認識する。


この企画を進めるにあたり、いくつかの難問にぶつかった。
まずは履修生たち全員が、そもそもファッション・ショーとは何かをまったく解っていない(イメージは何となく知っている)。もちろん直接観たことはない。しかも、新聞紙で衣装を製作することもはじめてである。
そうして、わたしの知る限りにおいては、新聞紙を使っての衣装の作り方はネットを検索しても出てこない(2012年8〜10月制作時)。よって自らが試行錯誤するしかない。この「検索しても出てこない」というところが今回の企画における仕掛けの一つでもある。案の上、新聞紙で作る衣装は難航を極めた。

①平面スケッチを立体にしていくときのイメージがつかめない。→学生の中には、さっそく図書館に行き、本を調べる者が出てきた。
②着たり脱いだりすることを考慮しなくてはならない。→着たままで、ガムテープ等で形を決めてしまい、脱げない、再度着ることができない、という現実にぶつかる学生も何名か目撃した。
③動きに対して、ある程度自由度があり、かつ丈夫でなければならない。補強しすぎると、逆に動きに支障が出る。

もちろん衣装製作だけでなく、舞台における動きの問題は大きな課題である
④舞台における見(魅)せる動きとは何か。→本来なら、プロのショーを見るべきだが、諸々の関係で難しいため、ビデオ映像により何度もプロのショーを鑑賞する。そうして動きを真似してみる。さらにそれをビデオで撮影し、プロの動きと比較する。
⑤ナレーションをどうするか。どこまで喋ってどこから解説しないか。
⑥音楽の問題をどうするか。オリジナル?

ファッション・ショーは本日終了したばかりであり、学生たちの感想は今後を待たねばならないが、ちょうど大学内新聞の取材が入り、それに答えている学生の感想が聞こえて来たが、想像をこえて、コンセプトを深く理解していて少し驚いてしまった。
肝心の、本企画が継続的に新聞を読み、自らのテーマを追い続けるきっかっけとなったのか、という回答はさらに追跡調査を実施しなければならない。もちろん、途中途中のテコ入れが必要だろう。



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( ↑ )出身校の商品開発ニュースを前面に配置した。

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※舞台の写真は、横村国治先生より提供を受けました。ありがとうございました。


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( ↑ )謎の男のテーマは「デザインの反逆」。

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( ↑ )このアイデアが出て、最初にしたスケッチ。


◆東海大学短期大学部のニュース
http://prog.pr.tokai.ac.jp/sjc/TkpNewsInfo?p_kijikubun=00&p_kijic=20121113162942


◆東海大学新聞 公式サイト
http://tokainewspress.com/view.php?d=524
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【新聞紙のファッションショー!?】
力を合わせてイベント開催

▽授業で学んだ成果を生かしてオリジナルイベントを開こう――。短期大学部経営情報学科の学生7人が、「第48回柚木りんどう祭」期間中の11月3日に一風変わった「ファッションショー」を開催した。学生たちが新聞紙で作った、ウエディングドレスやスポーツをテーマにしたチアガールの衣装などを披露するものだ。力作を目にした来場者や学生からは、「すごい。新聞紙でよく作ったね」といった声が聞かれていた。
▽この催しは、同学科2年生対象の授業「広告技法」(担当=平野雅彦講師)の受講生有志が企画。7月末から準備してきた。メンバーたちは、「新聞紙を使ったショーで、メディアとのかかわり方を考えるきっかけにしよう」と、現代を反映するテーマとしてウエディングと技術、サッカー、スポーツの4つを設定。テーマごとに分担して関連する過去の新聞を切り抜き、衣装を制作した。
▽メンバーの一人、落合彩乃さんは「運営方法や作り方はネットに載っているだろうと、気楽に始めた」と振り返る。ところが実際に調べると、そんなサイトはなく、「正直焦りました。でも仲間と取り組めるチャンスを無駄にしたくなかった。平野先生とも相談しながら何度も話し合い、当日の段取りや衣装作りを進めていきました」。ショーが終わった後、友人たちと「無事に終わったなんて奇跡みたい」と抱き合っていた落合さん。「新聞を読み返すことで、私たち自身がメディアとのかかわり方を考え直すきっかけにもなった。せっかく積んだ経験を卒業後にも生かしていきたい」と話していた。
▽学生たちは、「ゼロから作り上げたことで、ものづくりの難しさや完成したときの達成感も経験できた」と話している


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