カーブの大革命 2012/10/17
大学の授業の中でも口をすっぱくして伝えているのですが、「もうこれ以上改善の余地がない」、そう思っているモノや仕組みにも、必ず更によくなる余地が残されている。
今年2012年のはじめ、こんなハサミに出遭った。
文具メーカーPLUSの「fitcut CURVE」(フィットカットカーブ)。
ご存知だろうか。今年、ハサミに一大革命が起きていたのだ。
普段使いのハサミに対して、私たちはせいぜい、錆びない素材を採用するとか、あるいはデザイナーが機能よりも見た目の「オシャレ」を優先してデザインし直すとか、まあ、そんな改善が残されているのかもしれない、といった程度に考えていたに違いない(あるいはそれすら考えていなかった)。
ところが、ハサミにおける「刃のカーブ」が、単なるオシャレでしょう!というデザインよりも「機能」の方に革命を起こしたのだ。いや、正しく言い換えるなら、「デザインの力が機能をより充実させた」のである。これは流体力学の祖とも言われるダニエル・ベルヌーイ(Daniel Bernoulli 1700-1782)の研究成果をヒントにしたデザインの勝利といっていい。
文具メーカーのPLUSは、根元から刃先まで切断に最適な刃の開き角度、約30°を常に保つゆるやかなカーブを持ったベルヌーイカーブ刃を設計・開発、結果、ハサミの切れ味は従来の3倍となった(PLUSによる報告)。なんと開発においては人間の手による50万回以上の紙の切断テストを行ったようである。ちなみに多めに見積もって、わたしがあと50年生きられるとして、50万回を日で割ってみると・・・えっ、1日約27回もカチャカチャやり続けなければ、わたし自身がこの数字を実証できない(汗)
「fitcut CURVE」(フィットカットカーブ)には、いくつかのラインナップがあるようだが、わたしが手に入れたのはチタンコートの最高級モデル。
実際に使ってこれまでのハサミと切れ味を比較してみると、やっぱりまったく違うのだ。厚いボール紙もスイスイと切れる。この切れ味は体験した者でないとわからない。
え、お値段? チタンコートの最高級モデルでなんと735円。どう、お手頃でしょ。
ティッシュペーパー、トイレットペーパー、紙皿、割り箸・・・普段見掛けるモノほど、その「デザインという機能」をもう一度うたがってかかってみるのもいいだろう。
【追記】
・実はきょう、この切れ味の良いハサミで指を切りました(涙)ハサミが悪いのではなく、一重にわたしの失態です。
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