参加してよかった「キュレーター円卓会議」 2012/10/11
「キュレーター円卓会議」と聞いて、居ても立っていられなくなった。場所は、愛知県は蒲郡。ちょっとわたしの住んでいる静岡市からは距離がある。よし、新幹線の中で締め切りをやっつけるとしよう、と自らに発破をかける。それよりも何よりも、「円卓会議」の名がわたしの気持ちをダブルクリックした。きっと、アーサー王の伝説のように神秘的で、エラノス会議のように多種多様な議論が生まれる場に違いない。そう直感した。
舞台となる「生命(いのち)の海科学館」のサイトから案内を拾うと、この日の議論の内容はこうだ。
「美術館、科学館、博物館(以下ミュージアム)といった文化施設や大学、研究所は、地域コミュニティの文化や知識の拠点として、長い間地域文化の向上に大きく貢献してきました。しかしながら、経済や社会の変化によって、ミュージアムはいま、様々な問題に直面しています。また、美術館、科学館、博物館へ行くことが市民の日常生活に溶け込んでいるとはまだ言えません。マクロの視野に立つと、同じ地域にある美術館、科学館、博物館はそれぞれの理系,美術系など言った専門分野の違いや特性から、これまで十分に連携してきたとは言えない状況です。そこで、それぞれのキュレーターの抱える問題点を切り口に、地域における ミュージアムと社会の関わりについて議論し,連携することでうまれる新たな可能性を探りたいと思います。」
パネラーの揃いがいい(アーサー王の円卓会議は12人の構成だが、今回は半ダース。敬称略)。 揃いがいいと競いもよくなるというのが通り相場だ。
・以倉 新 学芸課長 (静岡市美術館)
http://www.shizubi.jp/
・尾坂 知江子 主任学芸員 (名古屋市科学館)
http://www.ncsm.city.nagoya.jp/
・杉浦 健 学芸担当主任主査 (おかざき世界子ども美術博物館)
http://www.city.okazaki.aichi.jp/museum/ka141.htm
・唐津 絵理 主任学芸員 (愛知芸術文化センター)
http://www.aac.pref.aichi.jp/
・長谷川 道明 学芸専門員 (豊橋市自然史博物館)
http://www.toyohaku.gr.jp/sizensi/
・山中 敦子 学芸員 (蒲郡市生命の海科学館)
http://www.city.gamagori.lg.jp/site/kagakukan/
・コーディネーター 杉森 順子 准教授(愛知工科大学)
静岡市美術館 学芸員の以倉新さんのお顔も見えるし、愛知工科大学の杉本順子さんがコーディネーターだ。唐津絵理さんは公共ホール(愛知芸術文化センター)からダンスを世界発信している数少ない人物で、あいちトリエンナーレーのプロデューサー(キュレーター)としても有名だ。なんといっても、美術館、科学館、博物館、文化センター大学などが一堂に会す、これだけでも面白くなりそうだ(それぞれのみなさんには、ものすごい専門性と、これまでの物語があることが、この後の「打ち上げ」でわかることになる)。
忘れないうちに、感想を二三書いておこう。
まずは、話はひじょうに多岐にわたり、同じ学芸員と呼ばれながらも、それぞれの役割、仕事内容などの違いや立ち位置が整理できた。コーディネーターの杉森さんが少しずつ作っていく議論の結び目もうまい。
いつも通り「もしもわたしが主催するなら」という無責任な立場で書いておくと、パネルディスカッションは横一列並びではなく、タイトル通りに「円卓」でもよかったとおもう。それをオーディエスが取り囲んで聴くというのも愉快である。実際にわたしはこんなこともしている。とにかく議論が盛り上がるのだ。
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1589.html
それからここ数年、わたし自身のテーマでもある「連携」というキーワード。これを最初の方で再定義して議論を深めていくという方法もあったかもしれない。というのは、わたしの中でずっとジュクジュクしているのが、複数の組織が一緒に何かを行ったら、それがすべて「連携」と称していいのかという疑問だ。
わたしは、組織同士が問題を共有し合ってそこからコンソーシアムのような形態が誕生し、その係わりの中で生まれた「方法」と言うものを使って自らの組織も再生させていくその同時性、そういう状態が継続的に動き出してはじめて「連携」と言えるのではないかと考えている。
とにもかくにも重い腰を上げて、はるばる蒲郡まで足を運んだ甲斐があったというものだ。主催のみなさん、パネラーのみなさん(パネル終了後、一緒に食事までさせて頂きました。感謝)、そうして今回ご案内頂いた愛知工科大学准教授の杉森順子さん、ありがとうございました。
( ↑ )パネルディスカッション終了後、パネラーのみなさんと一緒に、海が目前に見えるレストランでの打ち上げに参加させて頂いた。杉森さんのご配慮に感謝。
ここでの話がまた面白いのなんのって。やっぱり、学芸員の知識と視点はすごいですよ、ほんと。
◆「生命(いのち)の海科学館」で化石を観たら、自分の持っている化石をもう一度ちゃんと観たくなった。ゴソゴソ。
・http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1319.html
・http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1715.html
・http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/1579.html
◆化石と言えば、こんなエピソードもある。
http://www.hirano-masahiko.com/tanbou/999.html
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