静岡県立美術館『江戸絵画の楽園』が始まった 2012/10/07
静岡県立美術館で『江戸絵画の楽園』が始まった(10月7日(日)〜11月18日(日))。「江戸」とは「江戸時代」のことである。
http://www.spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/japanese/exhibition/kikaku/2012/04.php
今回の企画展は、描かれた作品の鑑賞と同時に、その絵を「乗せている媒体」そのものに焦点を当てているのがユニークだ。要は、掛け軸、屏風、巻子、画帖といった「媒体」(メディア)にクローズアップし、その機能とそこに描かれた作品がいかにその媒体を意識して描かれているかといった点に注目、展示している。
鑑賞の楽しみを奪わない程度に、例を挙げておこう。
会場入り口にある二曲一隻の『親子猿図屏風』(森狙仙)は、屏風を谷折りに折ることによって、左隻に描かれた小猿と、右隻に位置する親猿とが立体となり「空間」で目を合わせることとなる。平面の絵画では、ここまで立体に見えることはないだろう。立体となったとたんに、親猿のはげしい鳴き声も空気をふるわせるようである。
同じく屏風という表具に目をやるなら、守住貫魚(もりづみ・つらな)の六曲一隻の『唐子図屏風』は、折り曲げることで、唐子の持つ傘が前面へと突き出して見えるのである。さながら3D効果というものである。
また今回のポスターのメインビジュアルにもなっている葛飾北斎の『天神像』は、広告やチラシでは判らないが実は掛け軸というメディアによって表現されている。掛け軸には上の方(「天」という)にびらびらと下がった紐のようなものが二本ついているのを記憶されているとおもう。それを「風帯」(別名驚燕=きょうえん)というが、『天神像』の場合はそれが他に類例をみない神社の紙垂(しで=稲光のような形をした白い紙)にすり替わっているのである。察しの言い方なら、天神像といえば、菅原道真を想像されただろう。そう、その道真公を祀る神社そのものを見立てた表具なのである。
このように媒体(メディア)と絵の魅力的な関係をはじめ、今回初展示となる作品や、例えば谷文晁などは81年ぶりに公開される作品だし、約60年ぶりの葛飾北斎なども並ぶ。
え〜っ、大学生以下、無料なの!!! わたしが大学生ならこの「楽園」へ日参します。
( ↑ )毎回同じことを言うが、蚕が糸を紡ぐようにお話しされる静岡県立美術館 芳賀徹館長。
( ↑ )この展覧会を企画したのは、県美の若き学芸員 福士雄也さん。
わたしが上に書いた講釈は、ほぼこの福士さんの受け売りである。
ただし、先週、わたしが連載している埋め草に掛け軸というメディアについて書いたばかりであった。
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