平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

肉体と精神のあわい

pura

 ギリシャの哲人プラトンは格闘家だった。同時にプラトニック・ラヴの語源ともなる人物だった。このあわいにこそプラトンのヒミツがある。
 彼はアテナイ市内に大学をつくった。系統だった教育がここにスタートを切る。そうしてイデア論によって世界を串刺にし、通観した。
 そう、いくら乱暴にプラトンを語る場合でも、けして忘れてはいけないことがある。それは彼がシチリア旅行によってディオニュソスを助け、哲人王の理想を実現しようとして挫折したことだ。問題なのはこの挫折で、ここで敗者の辛酸をなめなければ、ピュタゴラス学派やソクラテス観念論を形而上学的に深化することも、イデアを措定しながら二元論を語ることもなかった。これは単に、敗北をバネにして、という根性論を言うのではない。格闘するということと、プラトニック・ラヴのあわいに入らなければ解けない問題を指摘しているのだ。

 新幹線の中がすっかりオフィスになった。神戸は秋の気配である。そう、いつも秋の気配である。

現在地:トップページ脳内探訪(ダイアリー)

サイトマップ