平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

鞄の中にずっと入っている新聞の切り抜き  2012/04/04

hikari1





今年の1月17日から鞄の中にずっと入っている朝日新聞(朝刊17面)の切り抜き記事。何度も、何度も、一行一行を立ち止まるようにして読む。それぞれの関係者はどんなふうに読むのだろう。

「インタビュー 世界でトップを取る 現代美術家 村上隆さん」(※抜粋)


▲「『クール・ジャパン』なんて海外では誰も言っていません。うそ、流言です。日本人が自尊心を満たすために勝手にでっち上げているだけで、広告会社の公的資金の受け皿としてしてのキャッチコピーに過ぎない。(中略)僕は村上隆という一人の人間として海外で注目されているのであって、クール・ジャパンとは何の関係もない」

▲「日本の美を分析して、世界の人々が『これは日本の美だな』と理解できるように、かみ砕いて作品をつくっていることだと思います。僕は、戦後日本に勃興したアニメやオタク文化と、江戸期の伝統的絵画を同じレベルで考えて結びつけ、それを西洋美術史の文脈にマッチするように構築し直して作品化するということを戦略的に細かくやってきました。それが僕のオリジナリティーです」

● それでも、日本政府は「クール・ジャパン」のアニメや玩具、ファッションなどを海外に売り出そうとしています。
▲「それは、広告会社などの一部の人間の金もうけになるだけ。アーティストには還元されませんし、税金の無駄遣いです(後略)」
「欧米には、美術館の学芸員らの人材が豊富で、作品をきちんと評価し、価値付けできるメソッドがある。審美眼を備えて信頼するに足るアート市場もある。意地悪なジャーナリズムもよく勉強していて対抗しがいがある。一方、日本は美術館がたくさんあるだけ。ジャーナリズムは印象批判に偏っており、マーケットを軽視している。オークション会社にしても、贋作をカタログに載せていたりする」

▲ 「日本の場合、教育に目を向けても、美術大学は無根拠な自由ばかりを尊重して、学生に何らの方向性も示さない。芸術には鍛錬や修業が必要なのに、その指導もできない。少子化や国立大学の法人化で、学生がお客さんになってしまい、教師は学生に迎合している。お陰で、あいさつさえまともにできず、独りよがりの稚拙な作品しかつくれない学生ばかりが世に送り出される。先鋭的なものは何も生まれてこない。だから、世界に出ていっても通用する芸術家が日本にはほとんどいないんです」

▲「(前略) 国内でこそこそ楽しくやっているから、安心しちゃってる。地方自治体が街おこしにアートを利用するから、アーティストも結構楽にやっていけるので、海外に目が向かないし、無根拠なもの作りをし過ぎる。ぬるい」

▲「僕は宮崎駿さんら何人かの尊敬する芸術家がいて、その遺伝子を受け継いでいるつもりです。彼らは自分の作品が世間に認められたくて仕事をしているんじゃない。本当に世の中を変えたくてやっているんですよ。ただ絵を描いたり、彫刻を作ったりするだけですけど、そうした活動を通して人々を目覚めさせるのが、僕ら芸術家の仕事なんです」
「でも、普通に考えれば、芸術ごときで世の中は変わらない。芸術なんて、この現代社会の中では無能、無意味です。だけど、やり続けるしかない。もだえ苦しみながら活動している姿を見て、鼓舞され、勇気づけられる人たちが絶対にいるはずだからです」





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※今日現在、twitter上でつぶやかれている平野雅彦さんは、私平野雅彦ではありません。


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