平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

誘惑   2011/05/11

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                                    PHOTO: P



「これはパソコンのハウツーを伝える授業ではありません。どちらかといえば、いかにパソコンから距離をおきフリーハンドという身体感覚を取り戻せるか。いかにパワーポイントを使わないで共感を創り出せるか。そんな授業です」

これは毎年、静岡大学で担当する「情報意匠論」の冒頭で学生に向かって必ず「宣言」する儀式のようなものだ。


友人のTさんから、ある高校の「情報とデザイン」という授業を担当する人材をさがしていると相談を受けた。実は、この話をきいて「面白そう!!やってみたい!」と、一瞬自分が抱えている仕事のボリュームも忘れかけてそう思った(汗)。全30回、大学の前後期、通年に相当するボリュームだ。面白そうだとおもった理由の一つは、小学生から大学院生まで、その中で授業を担当していないのが高校生だけということもあり、この年代の学習の仕方に以前から興味をもっていたからだ。

話をくれたTさんに詳細をうかがってみると、条件(生徒状況)の一つに「パソコン検定を受験する生徒から就労時にパソコンを活用していくことを目指す生徒まで」とあった(もちろんこの案件には、やや特殊な事情があることはわたしにも容易に察しがついた。それはそれでとても重要なことなのだろう)。

「情報とデザイン」という言葉から受け取るイメージは人さまざまだ。しかしながら、そう聞いたときにパソコンのスキルアップを想像する人の方が圧倒的に多いのではないだろうか。だからこそ、わたしは毎年授業の冒頭で「これはパソコンのハウツーを伝える授業ではありません」とわざわざ「宣言」するのだ。

そうして、やっぱりこの高校生の授業は、わたしのような「スキル」のない不器用な人間が担当する話ではないと察したのであった。


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