平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

新・静岡市のマークの審査

shisyou 

 2003年・年明け早々、静岡市役所のとある一室に数人が缶詰になっていた。
 目はパチパチ、頭はフラフラ。連日まともにお日様を見ていない、そんな状況が続いていた。
 静岡市と清水市が合併を迎えるにあたり、市のマークである市章の審査が大詰めを迎えていた。全国から6.774通の応募があり、それを一枚一枚手に取り、分類し、審査員同士が、ああでもないこうでもないと議論を繰り返していた。
 あれから、四年の歳月が流れたが、市のマークの話など、いっこうに人々の口の端にのぼらない。それで良いのだ。気付いたときに、なかなかうちのまちのマークって良いじゃん、と思ってもらえるようなマーク、そんなデザインを選んだつもりだ。
 そういえば、だれかが昨日「経験値はデザインをつまらなくする」と云っていた。「突然変異がデザインだ」とも力説していた。たしかにわたしもそう思う。ただし、今デザインは「経験値以前にもともと人間が持っている感覚をデザインする」という域に間違いなく入っている。とにかく他の人が未だやっていない商品を作り出したい、というデザイナーのエゴの時代でもない。奇をてらったデザインにわたしはまったく心が動かない。多くの携帯電話のデザインは品がなくて嫌いだ。

〈静岡市のサイトから〉
市 章 (平成15年5月23日制定)
 この市章は、全国から寄せられた6.774件のデザインの中から、市民投票を経て決定しました。
 静岡・清水、そして新「静岡市」の頭文字「S」を発想の基本に、自然と都市機能が見事に調和した豊かな都市イメージを表現しています。
 日本のシンボルである富士山と駿河湾の波のシンプルな造形が、活力あふれる未来、交流・連帯を基盤に飛躍する新しい都市、広がる市民の豊かな暮らしを感じさせます。
 シンボルカラーの「ブルー」(スマルト)は、清潔感と透明性を表し、空や海のようにどこまでも続く国際性、開放感を表現しています。

shinsa

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