平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

尽くし(汗)   2011/04/23

bhibi


実を云うとわたしはある食べ物が苦手です。それが何かはこの場では云いにくいのですが・・・。いえね、ゲテモノとか人間の食らうものではない!とかそういうことではありません。多くの人はきっと好物としているものです、はい。
以下、この場ではその食べ物を△と記すことにします。

ある年、某仕事のクライアントから
「京都のある有名料理店にご招待したい」とお誘いを受けました。
おう、京都、美味、ご招待!! わたしは欣喜雀躍しました。
「ある料理〈尽くし〉ですよ。でも未だヒ・ミ・ツです。お楽しみにね」
おー ツクシね。尽くしといったら日本文化そのものじゃーあーりませんか。〈桜づくし〉とか〈貝づくし〉とかいう、あの尽くしです。それは何かを一堂に集めて贅を尽くすことに他なりません。おーっ。
わたしは未だわからない「尽くし」に対して生唾を飲んだのでした。食いしん坊万歳。

で、当日は快晴。新調した紺色のスーツに身を包み、いざ、京都へ!!
道中大いに盛り上がり、さて、件の料理店へ。
そのお店は某公園の奥まったところにありました。
麻の暖簾には店の名と「△料理専門店」の文字が藍で染め抜かれていました。

えっ、ま、まさか・・・う・・・絶句・・・あのー・・・
わたし、△はとても苦手なんですが・・・(心の声・汗)
どうしましょう、ここまで来て、△は苦手ですとはとても云えません。

神にも祈る想いです。
だが予想通り、席に着くや出てくる出てくる、△料理のオンパレード。当然です、△尽くし専門店ですからね。
先付、椀物、向付、鉢魚、強肴、止め肴、食事、止め椀、香の物、菓子、型通りの会席です。
好きな人にとってみたらここは天国・極楽・蓬莱山。
しかし、この場に座ったわたしにとってみると地獄・暗黒・黄泉の国です(汗)
箸の先で、より細かく、もっと細かく、さらに細かく切って切って切り刻んで、少しずつ呑み込みます。まるで味わって食べているかのように見えたのでしょうか、クライアント衆は大変に満足な顔。
最後の方はもう丸呑みです。ペリカンか鵜飼いの鵜の気分です。ゴックン、ゴックン、丸呑みです。もちろん味わうなんて余裕はまったくありません。
目の前のみなさんはもう話題に花咲き満面の笑顔。追加のひと皿を注文する始末。

あ〜 その大変豪華な和室は、畳一枚隔てて天国と地獄の様相でありました、とさ。


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