平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

対称性の破れ   2011/12/17

sakura5




 JR静岡駅コンコースで、ミカン狩りの帰りだという知り合いの中学生KYちゃんとお母さんにバッタリと会う。いきなりYちゃんが、「平野センセ、最近話題になっている〈対称性の破れ〉ってなんのことですか〜」と訊いてくる(笑)。ノーベル賞の影響だね。いいことだ。「自分でちゃんと調べなさい」と冷たい平野センセ。「解らないんでしょう〜」と疑いの眼のYちゃん。ちょっと悔しいので、わたしは彼女が持っていたミカンを借りて、こんな例え話をした。
 「Yちゃんを含めた友だちたち六人が丸テーブルに座っています。六人全員の隣りにはミカンが一つずつ置いてあります。でもこの時点では右のミカンが自分のモノか、左が自分のミカンかが判断できません。みんな、とっても緊張しているわけです。これが〈対称性を保っている状態〉です。ところが、緊張に絶えきれず、Yちゃんが右か左に置いてあるミカンをパッと取りました。その瞬間に全員が、どちらが自分のミカンか判断し、急いでそれを手に取るでしょう。その状態が〈対称性の破れ〉です。ちょっと難しいけれど〈自発的対称性の破れ〉ということね。それから〈CP対称性の破れ〉という理論があって、〈C変換〉と〈P変換〉とがあってね、そう、粒子のスピンの向きと関係があるんだけど・・・ある現象は鏡に映っただけの状態ではその中で物理法則までは変わらないでしょう。ところが〈P変換の破れ〉というのがあって、鏡の中ではなんとその物理法則までが変わっちゃうんだ・・・(省略するね)・・・それを頭に入れたあと、宇宙の真空と質量という問題に取り組むんだ。ここが画期的だったんだけど。Yちゃんも聞いたことがあると思うけれど、ビッグバン時には宇宙の真空状態という対称性は保たれていたんだ。でも、あるときにそこに対称性の破れが生じて、一部の素粒子は質量を獲得した。ミカンを取っちゃったからね(笑・違うか〜)。逆に云えば、真空が素粒子に質量を与えたともいえるんだよ。その対称性の問題に功績を残したのが、今回の南部、小林、益川三氏の理論なんだ。云々・・・解った〜、Yちゃん(笑) 何か世の中で話題になったら、そのまま放っておかないで、ちゃんと理解しちゃおうね。おう、平野センセはミカンが好きだからこれはもらっておこう」


この場にアップした内容は、その後ペンを入れる場合があります。

バックナンバーはここ↓から。「表示件数」を100件に選択すると見やすくなります。

現在地:トップページ脳内探訪(ダイアリー)

サイトマップ