美文を伝える美文 〜三島由紀夫『文章読本』から 2011/03/16
鏡花は自分が美しいと思うもの以外には見向きもしませんでした。鏡花にはそこに一つの物体があるということは、何物でもありませんでした。水を入れた鉢がそこに存在しても、それが古い汚れた鉢であって、鏡花が美しいと思わないものならば、容赦なく無視しました。そうして自分が美しいと思うものにだけ感覚を集中し、思想を集中し、そうすることによって先のハーバード・リードの言葉のように、別の経路をたどって「全体性の知覚」に没入したのであります。
『文章読本』(p45)三島由紀夫 中公文庫1989
泉鏡花の美文を伝える三島由紀夫の美文。
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