平野雅彦が提唱する情報意匠論| 脳内探訪(ダイアリー)

平野雅彦 脳内探訪

読み聞かせ ブルーノ・ムナーリ『NELLA NOTTE BUIA』  2011/01/17

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知人のMさんから、ワクワクが抑えきれないといった雰囲気あふれる一通のメールが届く。

Mさんは以前から読み聞かせボランティアをしていて、この度その一冊にBRUNO MUNARI ブルーノ・ムナーリ(1907.10.24 - 1998.9.30)の『闇の夜に』(河出書房新社 2005/7/20)を選んだというのだ。

まことに正しい選書である。

『闇の夜に』、原題は『NELLA NOTTE BUIA』。1956年 ミラノのムッジャーニという版元から出た。一見絵本に見える本書は、子ども向けというよりも、むしろデザイナーを震撼させた一冊だ。

「哲学史とは、つまるところ延々と続けられたプラトンに関する注釈の歴史にすぎない」という箴言があるが、言い換えるなら、ブルーノ・ムナーリ以降のブックデザインは、ムナーリのブックデザインに関する注釈の歴史に過ぎない。そういっても過言ではないほど、ムナーリはあらゆる「発想の可能性」に挑戦し続けたデザイナーである。

今では、特殊紙の種類も増え、加工の技術も恐ろしく精密になった。一見すると紙なのか金属なのか判らないような技術さえある。それだけブックデザインの可能性が広がったというわけだ。だが、発想の飛躍、高さ、質で、ムナーリを超えていくのは並大抵なことではない。以前、あるデザイナーが、何をやってもムナーリの後追いになってしまうと嘆いていたのが印象的だった。
ムナーリのデザイン論はまた端的で秀逸である。ハーバードで学生の心をわしづかみにしたのは何もサンデル先生だけではないのだ。



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