映画『レオニー』 ※書きかけ 2010/12/31
※ 書きかけ
観たい映画にあふれている。読みたい本が多すぎる。
先日映画『レオニー』を観た。彫刻家イサム・ノグチの母親レオニー・ギルモアの波乱に満ちた人生を軸に、その家族と時代を描いた映画だ。
これは間違いなく映画館で観る作品だ。きっとテレビの前で観ていたら、最初の10分で読みかけの本を読み始めていただろう。
その後、ぐいぐいと惹き付けられ、最後まで一気に観てしまった。なるほど、台本14校、完成までに7年の歳月を費やしただけのことはある。とはいっても、すべてを手放しでほめるわけにもいかない。例えば、(イサム・ノグチファンにとっては)最後にイサムが「ノグチ」の姓を名乗ることを母親に宣言するシーンなどは、前後関係からいったらあまりにも唐突だろう。まあ、枝葉末節な話か。
とにかく数奇な運命が、アメリカと日本の狭間で「自己同一性」に悩み苦しんだ「宿命の越境者」(ネーミングはドウス昌代)、「橋」(ネーミングは三宅一生)イサム・ノグチを生み出した。
十年ほど前、わたしはイサム・ノグチの住居兼アトリエでもあった香川県の牟礼町にある「イサム・ノグチ庭園美術館」を訪れた。
http://www.isamunoguchi.or.jp/
編集工学研究所の松岡正剛さん主宰の未詳倶楽部という会でお邪魔したおかげで、たっぷりと時間をかけて広大な敷地を見て歩くことができた。また、幸運にもイサム・ノグチのお弟子さん、和泉正敏さんのお話しをうかがうこともできた。
この庭園美術館には、あちこちにイサムの代表作が設置されているのだが、多くの人の評価は巨大な石の彫刻「エナジー・ヴォイド」に集中する。なるほど、voidからあふれ出すエナジーは超銀河集団を連想させる。だがわたしは、彫刻庭園と呼ばれる更にその上の小高い丘にぽつりと佇む卵形の巨石に心奪われた。
この巨石には、中央辺りをぐるりとなぞるようにノミを入れた跡がある。まるで卵を二つに切り分けた感じのする跡である。果たしてその石は、上下二つに割れているのか。それは判らない。誰に訊いたのかはもう覚えていないが、この巨石こそイサム・ノグチが自分のために用意した墓であるというのだ。
丘の稜線をなぞるようにして海風が吹き上げてくる。驚くことに、眼下に見える瀬戸内の海岸線と巨石に刻まれたラインがぴたりと重なった。
どのくらいの時間が経ったのだろう。足下を抜けていく風が、今度は海に向かって吹き始めた。わたしもその風に背中を押されるように丘を下った。
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